第50回日本理学療法学術大会

講演情報

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ポスター3

体幹1

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-0954] 腰部疾患における内視鏡下術後のRoland-Morris Disability Questionnaireと術前身体機能の関係

石田康司1, 市丸勝昭1, 無津呂唯1, 重松達大1, 加藤剛2, 川口謙一2 (1.佐賀県医療センター好生館リハビリテーションセンター, 2.佐賀県医療センター好生館脊椎外科)

キーワード:腰部疾患, 日常生活, 身体機能

【はじめに,目的】
Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)は,腰痛による日常生活の障害程度を評価する尺度として用いられている。近年の腰部疾患の手術においては,低侵襲で行える内視鏡下椎間板摘出術(MED),内視鏡下椎弓切除術(MEL)が増加しており,従来の術式よりも早期退院が可能となってきている。入院時の理学療法は短期間となるため,術における日常生活の障害程度を術前から予測することができれば,重点をおくべき評価や理学療法プログラムを作成するうえで有用であると考える。今回,腰部疾患における内視鏡下術後のRDQに影響を与えている術前身体機能を検証した。
【方法】
対象は2014年3月から2014年9月までに,当院において腰部疾患におけるMED及びMELを施行され,入院中に理学療法を行った19例(男性14例,女性5例,平均年齢54.1±23.5歳)とした。なお,対象の選定は,重篤な内科疾患を有する者,脳血管疾患を有する者,腰部疾患以外の原因により歩行障害を有する者,研究の趣旨が理解できない者,研究への同意が得られなかった者は対象から除外した。測定項目は,術前は年齢,身長,体重,BMI,健側の体重支持指数(WBI),患側の体重支持指数(WBI),10m最速歩行時間,6分間歩行距離,足部のモノフィラメント圧痛覚,腰痛,殿部・下肢痛,殿部・下肢のしびれの程度についてはVASを使用し,バランス評価として開眼総軌跡長,閉眼総軌跡長,開眼外周面積,閉眼外周面積とした。術後はRDQを評価した。測定時期は,術翌日(術前),術後10日前後(術後)の,2つの時期に各評価を行った。統計学的解析は,術後RDQと術前測定項目との相関をPearsonの相関係数で分析した。RDQの影響因子は,ステップワイズ法にて従属変数を術後RDQとし,独立変数は相関係数が0.4以上であった項目とした。統計解析ソフトはSPSS ver21を使用し,帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とした。
【結果】
術後RDQと術前測定項目との相関は,体重(r=-0.52,p=0.02),10m最速歩行時間(r=0.47,p=0.04),6分間歩行距離(r=-0.51,p=0.03),腰痛の程度(r=0.70,p<0.01),殿部・下肢痛の程度(r=0.63,p<0.01)に有意な相関を認めた。術後RDQに影響を及ぼす因子は,腰痛の程度(β=0.52,p<0.01),6分間歩行距離β=-0.52,p=<0.01)が選定された(R2=0.73,p<0.01)。
【考察】
術前の腰痛の程度,6分間歩行距離は,術後RDQに影響を及ぼすことが示唆された。術前の腰痛の程度が強い場合,手術により神経除圧が得られても,椎間関節や筋筋膜性由来の要素が強い場合は腰痛が残存し,ADLが障害されていたと考えられる。また,腰痛は歩行時のアライメント異常にも影響を受け,長時間の歩行で筋疲労が生じやすくなるため,二次的に連続歩行距離の低下を来すことが考えられる。そのため,術後ADLの向上ために,術前からの薬物による疼痛コントロールを行い,リラクゼーションによる筋疲労の軽減,良姿勢の指導,運動療法による腰部筋の強化を行うことが重要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,腰部疾患における内視鏡下術後のADLに,術前の腰痛の程度,6分間歩行距離が関与する可能性が示唆された。これによって,腰部疾患患者に対する治療プログラムの中で,疼痛コントロール,連続歩行距離の改善に向けたアプローチの効果が,術後のADLにいくらかの影響を与える可能性が期待される。