第50回日本理学療法学術大会

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2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1068] トランスセオレティカルモデルを応用した運動指導は地域在住高齢者の運動実施頻度向上につながるか?

―1年間のフォローアップ―

細井俊希1, 新井智之1, 丸谷康平1, 藤田博暁1, 竹中晃二2 (1.埼玉医科大学, 2.早稲田大学)

キーワード:地域在住高齢者, 運動継続, 行動変容

【はじめに,目的】行動科学の理論・モデルの一つであるトランスセオレティカルモデル(以下,TTM)は,対象者の行動に対する準備性を5つのステージに分類し,ステージに応じてアプローチを変えることで行動の採択や継続を促すというものであり,禁煙,減量,運動などで行動変容を促す効果が示されている。本研究は,ある特定の新しい運動を指導する際に,運動指導前を初期ステージと捉え,個人に対してTTMの流れで運動指導することが,運動の採択やその後の継続につながるかどうかを検討することを目的として実施した。さらに,運動実施頻度と,運動機能や健康状態,および健康関連QOLとの関係についても検証した。

【方法】対象:埼玉県の地域在住高齢者24名(介入群10名,統制群14名)。介入群にはTTMを応用した運動指導を,統制群には通常の運動指導を行い,開始時,1ヵ月後,3ヵ月後,6ヵ月後,1年後の運動実施頻度を確認した。6ヵ月後までは,開眼片脚立位時間,CS-30,転倒セルフエフィカシー,SF-8の測定も実施した。各評価項目の運動指導時,1ヵ月後,3ヵ月後,6ヵ月後のデータについては,二要因分散分析を行い,差が認められたものに関してはTukey法による多重比較を実施した。危険率はいずれも5%未満とした。

【結果】運動指導1ヵ月後には統制群14名,介入群10名の全員が参加したが,3ヵ月後以降の参加者は統制群9名,介入群9名となった。指導した各運動の運動実施頻度は,1ヵ月後は介入群で高かったが,3ヵ月後以降は介入群と統制群で差は認められなかった。また,実施頻度は時間とともに徐々に減少した。測定項目では,CS-30および片脚立位時間は両群で開始時に比べ向上が見られた。介入群が統制群に比べ高かったのは,CS-30の1ヵ月後以降,および片脚立位時間の6ヵ月後であった。

【考察】TTMを応用した運動指導は,地域在住高齢者の運動の採択に寄与し,脱落率も低かったことから,高齢者が受け入れやすく継続しやすいものであったといえる。しかし,介入頻度の減少とともに運動実施率は徐々に低下したことから,今後は介入の頻度等についても検討する必要があると考える。運動機能は運動実施率に応じて向上が認められた。

【理学療法学研究としての意義】現在,日本全国各地で介護予防事業が実施されており,様々な運動を取り入れたプログラムが実施されている。しかし,いくら優れた運動プログラムを作成しても,実施し継続されなければ意味がない。本研究の結果は,介護予防事業等で地域在住高齢者に運動指導を実施する際の参考になると思われる。