第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

支援工学理学療法2

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1100] 脳卒中片麻痺患者に対する靴べら型短下肢装具とオルトップAFOの適応についての検討

岩澤里美1,3, 木元裕介2,3, 中澤明紀2,3, 佐竹將宏3 (1.秋田県立リハビリテーション・精神医療センター, 2.秋田県立脳血管研究センター, 3.秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻理学療法学講座)

Keywords:脳卒中片麻痺, 靴べら型短下肢装具, オルトップAFO

【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者に処方されるプラスチック短下肢装具(以下,AFO)には,靴べら型短下肢装具(以下,SHB)が最も多く,次いでオルトップ型AFOという報告がある。また,オルトップ型AFOには3種類あり,オルトップAFO(以下,オルトップ),オルトップAFO-LH(以下,LH),オルトップAFO-LHプラス(以下,プラス)の順に固定力・保持力が強くなる構造となっている。プラスチックAFOは運動麻痺の改善に合わせて処方されるが,臨床的には何を基準としてどのタイプを処方するか迷うことが多い。そこで今回,SHBとオルトップ型AFOを処方した患者データから評価結果に違いがあるかを検討し,今後の処方に役立てることを目的にこの研究を実施した。
【方法】
当センターに入院し,2010年9月から2014年7月までの間にリハビリテーションを受けた脳血管障害患者のうち,入院後に初めてSHBまたはオルトップ型AFOのいずれかを処方された者を対象とし,入院カルテより後方視的調査を行った。患者属性,発症から装具処方までの期間,身体機能(下肢Br.stage,表在・深部感覚,筋緊張,10m最大歩行速度,麻痺側足関節背屈角度・MMT,両側の等速性膝伸展筋力,MOA,FIM運動項目合計点,退院時移動手段),認知機能(FIM認知項目合計点)を収集し,SHBとオルトップ型AFO間(以下SHB群とオルトップAFO群)およびオルトップ型AFOの3種類間で比較検討した。統計解析にはSPSS ver.21を用い,Kruskal-Wallisの検定および多重比較検定を行った。
【結果】
SHB群は男性11名,女性11名の22名で平均年齢60.3±12.5歳,オルトップ群は男性9名,女性5名の15名で平均年齢65.4±15.1歳,LH群は男性19名,女性12名の31名で平均年齢67.6±12.4歳,プラス群は男性6名,女性3名の9名で平均年齢67.4±9.1歳であった。疾患名はSHB群:脳梗塞10名,脳出血12名,オルトップ群:脳梗塞7名,脳出血8名,LH群脳梗塞21名,脳出血10名,プラス群:脳梗塞4名,脳出血4名,脳挫傷1名であった。発症から装具作成までの期間はSHB群:92.5±23.6日,オルトップ群:70.6±16.4日,LH群:115.7±101.8日,プラス群:92.8±24.6日で,有意差は認められなかった。
SHB群とオルトップAFO群の比較ではBr.stage(中央値はSHB群でIII,オルトップAFO群でIV),表在・深部感覚(中央値はSHB群で重度鈍麻,オルトップAFO群で軽度鈍麻),足背屈MMT(中央値はSHB群で0.5,オルトップAFO群で3),麻痺側等速性膝伸展筋力(SHB群:10.9±15.5%BW,オルトップAFO群:36.1±29.7%BW,MOA(SHB群:15.7±8.9か月,オルトップAFO群:27.7±13.3か月),FIM運動項目合計点(SHB群:50.6±21.1点,オルトップAFO群:70.8±16.9点),FIM認知項目合計点(SHB群:24.5±7.9点,オルトップ群:30.4±5.7点),退院時移動手段(中央値はSHB群で車椅子自操,オルトップAFO群で歩行自立)で,それぞれで有意差が認められた。
オルトップ群,LH群,プラス群の比較では,下肢Br.stage(中央値は3群ともにIV),表在感覚(中央値はオルトップ群とLH群で軽度鈍麻,プラス群で中等度鈍麻),深部感覚(中央値は3群ともに軽度鈍麻),足背屈MMT(中央値はオルトップ群で3,LH群で2,プラス群で2.5),麻痺側等速性膝伸展筋力(オルトップ群:37.7±36.1%BW,LH群:34.3±24.3%BW,プラス群:39.5±35.1%BW),MOA(オルトップ群:30.2±13.1か月,LH群:26±13.4か月,プラス群:28.1±13.9か月),FIM運動項目合計点(オルトップ群:75±9.8点,LH群:68.4±19.2点,プラス群:70.2±18.1点),FIM認知項目合計点(オルトップ群:31.7±3.3点,LH群:29.4±6.3点,プラス群:30.3±6.8点),退院時移動手段(中央値は3群ともに歩行自立)で,いずれも有意差は認められなかった。
【考察】
SHB群とオルトップ型AFO群の比較から,表在・深部感覚障害が軽度で下肢の運動麻痺の分離が良く,麻痺側の膝関節や足関節のコントロールができる者にはオルトップ型AFOが処方される可能性が示唆された。またFIM認知項目合計点の結果から,歩行時に麻痺側下肢や周囲の状況に注意を向けることが困難な患者には足部のコントロールが強いSHBが処方される可能性が示唆された。しかし,今回の結果からはオルトップAFOの3種類の適応に違いを見つけることができなかった。今後さらに検討する必要があると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
患者に適応したAFOを処方することは,適切な装具療法を行う上で基本であり,そのためには各々の装具を処方する基準を明確化する必要がある。今回SHBとオルトップAFOの違いが明らかとなったことは意義深い。