[P3-B-1125] 嚥下機能に影響する上位頸椎および下位頚椎の運動について
Keywords:嚥下障害, 上位頸椎, 下位頸椎
【はじめに,目的】
一般的に,頚椎伸展位は嚥下障害に関与するとされているが,上位および下位頚椎の機能分化については確認されていない。一昨年,ハローベスト装着下において,上位頸椎過伸展位による下顎挙上位が,嚥下障害に起因した症例について発表した。その際に,頸部前面の軟部組織に過剰緊張を認めたため,頚椎伸展による頸部前面の組織過伸張が,嚥下障害に関与するのではないかと考えた。上位・下位頚椎の屈曲位・伸展位を組み合わせて行い,各姿勢における上位・下位頚椎の可動割合と頸部前面の皮膚距離を比較して,矢状面における頚椎運動と組織伸張が関連しているか確認した。また嚥下造影を行う事で,姿勢と嚥下障害の関与についても確認した。
【方法】
嚥下障害および頚椎疾患のない男性10名(平均28,8歳)を対象として,口頭指示による自動運動を行い,①正中位②上位頚椎屈曲③上位頚椎伸展④上位・下位頚椎屈曲⑤上位頚椎伸展かつ下位頚椎屈曲⑥上位・下位頚椎伸展⑦上位頚椎屈曲かつ下位頚椎伸展,7項目について面矢状面X-Pを撮影した。測定は,後頭骨は外後頭隆起からの接線およびC2・C7椎体上縁の接線を用いて,上位頸椎(Co~C2)下位頚椎(C2~C7)2項目のROMを計測した。①正中位を基準ROM0°として,屈曲位を-○°伸展位を+○°と表記した。同時に下顎最突出部~胸骨上端の皮膚距離を測定して,頚椎前面組織長とした。①正中位を基準0cmとして,±cm表記とした。①を基準として,②~⑦各動作における上位頸椎・下位頚椎の可動域と,頸部前面の組織長の関係性について比較検討した。また1症例ではあるが,同様の姿勢による嚥下造影(VF)を行い,嚥下の様子や上下動や喉頭蓋の動きと,安静時における舌骨の位置を頚椎の高位で確認した。
【結果】
正中位を基準0°と0cm,舌骨の高位はC3。②上位頸椎屈曲位では,上位-6,8°下位-10,1°距離-3.4cm,舌骨の高位C4。③上位頚椎伸展位では,上位+22,2°下位+20,0°距離+5.6cm,舌骨の高位C2。VFにて喉頭蓋の軽度動作制限を認めた。④上位・下位頚椎屈曲位では,上位-4,2°下位-37,8°距離-7.3cm,舌骨の高位C4。⑤上位頚椎伸展位かつ下位頚椎屈曲位では,上位+25,1°下位-20,7°距離+2.2cm,舌骨の高位C2。⑥上位・下位頚椎伸展位では,上位+25,9°下位+43°距離+7.3cm,舌骨の高位C2。VFにて喉頭蓋の動作制限を認めた。⑦上位頸椎屈曲位かつ下位頚椎伸展位では,上位-3,9°下位+34,6°距離+1.9cm,舌骨の高位C4。VFにて喉頭蓋に動作制限を認めた。
【考察】
今回の結果から,頚椎運動は頚椎前面距離に関与するが,上位および下位頚椎の優位性は同等だった。また頚椎前面距離と嚥下障害の関係性は明らかではなく,下位頚椎の伸展位が嚥下障害に影響していた。しかし下位頚椎伸展位は,頭部支持のため頸部前面筋を抗重力筋として使用するため,非抗重力姿勢での確認が必要と考えた。一方,安静時の舌骨の高位は,上位頸椎の屈曲・伸展に影響を受けていた。これらより,上位頚椎と下位頚椎には,嚥下において異なる機能がある可能性が示唆された。今後も,これらの機能分化を確認する事により,嚥下障害への対応を検討していきたいと考えている。
一般的に,頚椎伸展位は嚥下障害に関与するとされているが,上位および下位頚椎の機能分化については確認されていない。一昨年,ハローベスト装着下において,上位頸椎過伸展位による下顎挙上位が,嚥下障害に起因した症例について発表した。その際に,頸部前面の軟部組織に過剰緊張を認めたため,頚椎伸展による頸部前面の組織過伸張が,嚥下障害に関与するのではないかと考えた。上位・下位頚椎の屈曲位・伸展位を組み合わせて行い,各姿勢における上位・下位頚椎の可動割合と頸部前面の皮膚距離を比較して,矢状面における頚椎運動と組織伸張が関連しているか確認した。また嚥下造影を行う事で,姿勢と嚥下障害の関与についても確認した。
【方法】
嚥下障害および頚椎疾患のない男性10名(平均28,8歳)を対象として,口頭指示による自動運動を行い,①正中位②上位頚椎屈曲③上位頚椎伸展④上位・下位頚椎屈曲⑤上位頚椎伸展かつ下位頚椎屈曲⑥上位・下位頚椎伸展⑦上位頚椎屈曲かつ下位頚椎伸展,7項目について面矢状面X-Pを撮影した。測定は,後頭骨は外後頭隆起からの接線およびC2・C7椎体上縁の接線を用いて,上位頸椎(Co~C2)下位頚椎(C2~C7)2項目のROMを計測した。①正中位を基準ROM0°として,屈曲位を-○°伸展位を+○°と表記した。同時に下顎最突出部~胸骨上端の皮膚距離を測定して,頚椎前面組織長とした。①正中位を基準0cmとして,±cm表記とした。①を基準として,②~⑦各動作における上位頸椎・下位頚椎の可動域と,頸部前面の組織長の関係性について比較検討した。また1症例ではあるが,同様の姿勢による嚥下造影(VF)を行い,嚥下の様子や上下動や喉頭蓋の動きと,安静時における舌骨の位置を頚椎の高位で確認した。
【結果】
正中位を基準0°と0cm,舌骨の高位はC3。②上位頸椎屈曲位では,上位-6,8°下位-10,1°距離-3.4cm,舌骨の高位C4。③上位頚椎伸展位では,上位+22,2°下位+20,0°距離+5.6cm,舌骨の高位C2。VFにて喉頭蓋の軽度動作制限を認めた。④上位・下位頚椎屈曲位では,上位-4,2°下位-37,8°距離-7.3cm,舌骨の高位C4。⑤上位頚椎伸展位かつ下位頚椎屈曲位では,上位+25,1°下位-20,7°距離+2.2cm,舌骨の高位C2。⑥上位・下位頚椎伸展位では,上位+25,9°下位+43°距離+7.3cm,舌骨の高位C2。VFにて喉頭蓋の動作制限を認めた。⑦上位頸椎屈曲位かつ下位頚椎伸展位では,上位-3,9°下位+34,6°距離+1.9cm,舌骨の高位C4。VFにて喉頭蓋に動作制限を認めた。
【考察】
今回の結果から,頚椎運動は頚椎前面距離に関与するが,上位および下位頚椎の優位性は同等だった。また頚椎前面距離と嚥下障害の関係性は明らかではなく,下位頚椎の伸展位が嚥下障害に影響していた。しかし下位頚椎伸展位は,頭部支持のため頸部前面筋を抗重力筋として使用するため,非抗重力姿勢での確認が必要と考えた。一方,安静時の舌骨の高位は,上位頸椎の屈曲・伸展に影響を受けていた。これらより,上位頚椎と下位頚椎には,嚥下において異なる機能がある可能性が示唆された。今後も,これらの機能分化を確認する事により,嚥下障害への対応を検討していきたいと考えている。