第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

卒前教育・臨床実習5

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1134] クリニカルクラークシップ型臨床実習の利点と問題点

実習生に対するアンケート調査による検討

藤原賢吾, 岩本博行, 中山彰一 (福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科)

Keywords:臨床実習, クリニカルクラークシップ, アンケート

【はじめに】
クリニカルクラークシップ(以下CCS)は,臨床実習における教育形態として日本理学療法士協会による教育ガイドラインに,今後の臨床実習の基軸として示されたこともあり,導入する施設,養成校が増加している。本校においては,現在従来型とCCSの形態が混在している状況であるが,CCSへの早期移行を目指して取り組みを開始している。CCSの有益性としては学生への教育効果,過度なストレスの軽減,指導者の負担軽減,患者保護など多く挙げられるが,実際の現場ではCCSに対する誤った認識やスタイルだけの取り込みなどにより本来の効果が得られていないことも考えられる。そこで今回,CCSの現状を把握し,利点と問題点を明確にする目的で,実習終了後の学生にアンケート調査を実施し,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は本校理学療法学科在籍の4年生96名(男性69名,女性27名)平均年齢23.9±3.3歳であった。平成25年8月から平成26年8月の期間に昼・夜間部の学生が実施した評価実習,長期実習I期・II期についてアンケート調査を行った。アンケート記入は無記名で,最後の臨床実習終了後に実施した。アンケート内容は,指導方法,施設形態,発表の有無,課題の量,課題進捗状況,インシデント・拒否の有無,症例理解,臨床推論能力,指導者・患者様との関係,理学療法・それ以外の知識,評価・治療技術,理学療法士を目指す気持ちについての17項目について5件法で評価した。また,CCSについてのイメージ(4段階)とその理由(自由記載形式),CCSでの実習後に従来型の実習を経験した学生のみ,従来型実習で苦労した点を自由記載形式で回答を求めた。実習指導方法別に従来型の群(以下従来群)とCCSと併用型を合わせた群(以下CCS群)の2群に分け,各質問について全体に対する割合を算出し,χ2乗検定にて選択されたものに偏りがないか検定した。また,回答の1~5の順序尺度をコード化し,従来群とCCS群の比較をMann-WhitneyのU検定を用いて検定した。統計学的解析は,PASW statistics version17を用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
従来群は77.4%(n=223),CCS群は22.6%(n=65)であった。各々の質問に対する回答は全て有意な偏りがあった(p<0.05)。2群間に差がみられたのは,課題進捗状況の遅れについて,CCS群が有意に遅れがなかった(p<0.01)。また,理学療法以外の知識について,CCS群が有意に「向上した」が多かった(p<0.01)。それ以外に2群間に有意差はなかった。CCSのイメージは経験した群(n=39)は,「良いイメージ」が多く(56.4%),経験していない群(n=57)は,「よく知らない」が最も多かった(43.9%)。両群を通じて「悪いイメージ」は少なかった(2.6%,1.8%)。良いイメージの理由は,「多くの症例を経験できる」が多かった。従来型実習で苦労した点は「レポート作成」が多く,その他に「経過を追いながら評価する作業」などの回答があった。
【考察】
今回の調査結果から,CCSは従来型の実習に比べ,実習の進行がスムーズで,理学療法以外の知識に関しても幅広く学ぶ事ができることが示唆された。よって,CCSの有益性が実際の現場で有効に機能していることが明らかになった。症例理解や臨床推論能力に関しては従来型に劣ることが懸念されたが,結果的に有意差はなく,従来型と同様の結果となった。CCSを経験した学生のイメージも肯定的なものが多く,今後の導入に向けては前向きな結果であった。気になる点としてはインシデントの有無の項目で,従来型と同様の結果で,リスク管理に課題があることが考えられ,学校側での指導も必要であると思われた。今後,CCS導入の課題としては,当面,CCSと従来型の混在した状況が想定され,CCS型の実習の後に従来型の患者担当制やレポート指導に取り組む学生に対するフォローアップなどをどうしていくか検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
今後,臨床実習の指導方法がCCSへと移行する流れの中で,CCSが臨床の場で理念どおりの有益性を発揮できているかを検証する事は重要であり,有意義であると考える。今後は,今回の前向きな結果を踏まえ,実習施設への啓蒙活動,本来の有益性が発揮できるように取り組みを進めていく必要がある。