[P3-B-1137] 応用行動分析学を用いた臨床実習での基本的態度の会得
1事例における検討
Keywords:臨床実習, 応用行動分析学, 行動変容
【はじめに,目的】近年,臨床実習において,挨拶やコミュニケーションなどの適性や態度の問題,および課題遂行と提出の著名な遅滞が目立つようになってきたように思われる。また,実習におけるうつ病や適応障害,果ては自殺に追い込まれた例やハラスメントの問題も漏れ聞こえる。今回,実習前の日常からコミュニケーションが苦手で,実習においても同様の指摘を繰り返されていた学生に対して,実習とは経験と育ている場との立ち場に基づき,応用行動分析学を用いた介入を行い,行動変容に及ぼす影響を検討した。
【方法】対象は理学療法士養成課程4年生の男性。学校生活や過去の臨床実習(2施設,計4週)において,言葉遣いに不適切なものがある,課題をまとめられず,期限内に提出できないなど,情意面での問題を繰り返し指摘されていた。養成校の評価表の項目では,理学療法の評価や治療の前に「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」や「積極性」に該当する項目の問題が指摘されていた。そこで,当院での実習では応用行動分析学を用いて行動の変容を図る介入を行うことになった。応用行動分析学は,心理学者であるスキナーが体系づけた行動分析学を人に応用したものであり,目に見えない心の内面ではなく,目に見える行動に着目することが特徴である。そして,行動は環境との相互作用により影響を受けるとの概念の下,行動が行われる環境(先行刺激),行動,行動により起こる結果(後続刺激)の3項目に分けて状況を分析し,各項目に関する調整をした介入により,行動変容に導くことを目標とした。介入にあたり,「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」や「積極性」という漠然とした表現を具体的行動として置き換えるために,開始後1週間をベースライン期として,学生の行動を観察した。それにより記録された不適切な行動のうち,実習中に改善を目標とする行動を学生と協議して「初めて会う患者に自己紹介ができる」,「リハビリテーション実施前にオリエンテーションができる」など26項目に絞り込んだ。26項目についての状況を記録するチェック表には,助言なくかつ自ら適切な行動をとれた場合は「○」,助言等の介助を得て適切な行動をとれた場合は「△」,助言等の介助を得てもできなかった場合は「×」として,学生と指導者ともに毎日記録を行うこととした。記録は帰宅前に行い,記録直後にフィードバックを行った。そして,状況を分析し,学生を取り巻く実習環境の整備を図った。先行刺激について,評価を不可にはしないこと,適切な行動を増やすことを一緒に目指すこと,経過中に不適切な言葉遣いがあっても注意しないこと,および改善結果を実習総合評価表に反映させることをルールとして提示した。後続刺激としては,実習時間中に,適切な行動がとれていた場合は,その場で賞賛・注目を与えた。また,結果は毎日口頭とグラフでフィードバックし,チェック表に「○」の項目があった場合,または「○」の数が増えた場合に賞賛・注目を与えた。
【結果】介入は残りの実習で期間である8週間行った。介入初日の学生の自己評価では,学生による評価における「○」の数は11個,介入3日目は25個,介入8日目には全ての項目に「○」をつけることができていた。チェック表に記載した行動がとれていた場合もその直後に,賞賛・注目を与えた。質問数の推移をフィードバックした。実習中に担当させていただいた患者からは,当初は「動きが遅い」,「こけしみたい」との発言が聞かれていたが,最終的には,「だいぶ変わった」「動きがすばやくなった」などの,賞賛の言葉を得られるまでとなった。
【考察】応用行動分析学を理学療法や自閉症児の教育をはじめヒューマンサービスに活用した報告は多い。今回,臨床実習に活用したところ,「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」と「積極性」の問題について,適切な行動を生起・定着させることがかのうであった。したがって,応用行動分析学は臨床実習の指導技法として有効である可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】応用行動分析学を臨床実習教育に活用することにより,実習指導効果を高める可能性があり,実習指導技法として有用であると考えられた。
【方法】対象は理学療法士養成課程4年生の男性。学校生活や過去の臨床実習(2施設,計4週)において,言葉遣いに不適切なものがある,課題をまとめられず,期限内に提出できないなど,情意面での問題を繰り返し指摘されていた。養成校の評価表の項目では,理学療法の評価や治療の前に「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」や「積極性」に該当する項目の問題が指摘されていた。そこで,当院での実習では応用行動分析学を用いて行動の変容を図る介入を行うことになった。応用行動分析学は,心理学者であるスキナーが体系づけた行動分析学を人に応用したものであり,目に見えない心の内面ではなく,目に見える行動に着目することが特徴である。そして,行動は環境との相互作用により影響を受けるとの概念の下,行動が行われる環境(先行刺激),行動,行動により起こる結果(後続刺激)の3項目に分けて状況を分析し,各項目に関する調整をした介入により,行動変容に導くことを目標とした。介入にあたり,「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」や「積極性」という漠然とした表現を具体的行動として置き換えるために,開始後1週間をベースライン期として,学生の行動を観察した。それにより記録された不適切な行動のうち,実習中に改善を目標とする行動を学生と協議して「初めて会う患者に自己紹介ができる」,「リハビリテーション実施前にオリエンテーションができる」など26項目に絞り込んだ。26項目についての状況を記録するチェック表には,助言なくかつ自ら適切な行動をとれた場合は「○」,助言等の介助を得て適切な行動をとれた場合は「△」,助言等の介助を得てもできなかった場合は「×」として,学生と指導者ともに毎日記録を行うこととした。記録は帰宅前に行い,記録直後にフィードバックを行った。そして,状況を分析し,学生を取り巻く実習環境の整備を図った。先行刺激について,評価を不可にはしないこと,適切な行動を増やすことを一緒に目指すこと,経過中に不適切な言葉遣いがあっても注意しないこと,および改善結果を実習総合評価表に反映させることをルールとして提示した。後続刺激としては,実習時間中に,適切な行動がとれていた場合は,その場で賞賛・注目を与えた。また,結果は毎日口頭とグラフでフィードバックし,チェック表に「○」の項目があった場合,または「○」の数が増えた場合に賞賛・注目を与えた。
【結果】介入は残りの実習で期間である8週間行った。介入初日の学生の自己評価では,学生による評価における「○」の数は11個,介入3日目は25個,介入8日目には全ての項目に「○」をつけることができていた。チェック表に記載した行動がとれていた場合もその直後に,賞賛・注目を与えた。質問数の推移をフィードバックした。実習中に担当させていただいた患者からは,当初は「動きが遅い」,「こけしみたい」との発言が聞かれていたが,最終的には,「だいぶ変わった」「動きがすばやくなった」などの,賞賛の言葉を得られるまでとなった。
【考察】応用行動分析学を理学療法や自閉症児の教育をはじめヒューマンサービスに活用した報告は多い。今回,臨床実習に活用したところ,「専門職としての適性・基本的態度・姿勢」と「積極性」の問題について,適切な行動を生起・定着させることがかのうであった。したがって,応用行動分析学は臨床実習の指導技法として有効である可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】応用行動分析学を臨床実習教育に活用することにより,実習指導効果を高める可能性があり,実習指導技法として有用であると考えられた。