第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

臨床教育・管理運営

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1139] 日本理学療法協会会員を対象とした託児室設置に関するアンケート調査

西山昌秀, 寺尾詩子, 清川恵子, 大槻かおる, 萩原文子, 大島奈緒美, 杉山さおり, 久保木あずみ, 石田輝樹, 佐藤史子 (公益社団法人神奈川県理学療法士会会員ライフサポート部)

Keywords:託児室, 就業継続, アンケート

【はじめに,目的】当部では,ライフサイクルと就業継続に関する問題をテーマに,本会会員に対する実態調査,啓発活動,情報発信,支援事業を実施している。その事業の一環として,幼い子供を育てている会員の参加を促進する目的で学会・研修会等への託児室設置事業を実施している。本研究の目的はその事業継続および拡大にあたり,日本理学療法士協会会員を対象に利用者へのニーズや幅広い立場での託児室設置に対する認識を調査し,託児室運営の一助にすることである。
【方法】調査対象は,第49回日本理学療法学術大会に参加した理学療法士とし,学術大会会場にて当部部員がアンケート用紙を無作為に手渡しと会場設置にて配布した。用紙の回収は回答者からの直接回収と回収箱の設置にて行った。調査期間は平成26年5月30,31日である。アンケートの内容は,基本属性として年齢,性別,子育て経験の有無,託児室事業については,託児室の利用料,優先して設置すべき学会・研修会,託児室利用状況については,学会・研修会等での託児室利用の有無,本学術大会での託児室利用の有無,託児室が設置されていない場合の対策などである。利用料の設定に対する根拠は自由記載とした。さらに託児室の利用料,優先して設置すべき学会・研修会,託児室が設置されていない場合の対策は複数回答を可とした。
【結果】アンケートの配布は814枚,回収が471枚(回収率57.9%)であった。回答者の基本属性は,平均年齢34.0±10.0(歳),性別は男性206名(43.7%),女性265名(56.3%),子育て経験はあり203名(43.0%),なし268名(57.0%)であった。
託児室事業に関して,託児室の利用料は,無料284名(60.2%),自治体の事業と同程度161名(34.1%),民間の事業と同程度24名(5.1%),その他11名(2.3%),未記載4名(0.8%)であった。利用料の設定の根拠は,あり120名(25.4%),なし348名(73.8%),未記載4名(0.8%)であった。根拠の内容について,無料の場合は,参加しやすい17名,参加者を増やす11名,有料の場合は,財源確保12名,多少の負担はしょうがない10名の順であった。優先して設置すべき学会・研修会は,学会243名(51.6%),専門/認定PT取得に必要な研修会231名(49.0%),全国研修会212名(45.0%),新人研修プログラム86名(18.2%),わからない13名(8.6%)であった。
託児室利用状況については,子育て経験がある回答者203名のうち学会・研修会で託児室利用の有無は,あり29名(14.2%),なし173名(85.2%),未記載1名(0.6%)であった。本学術大会での託児室利用の有無は,あり11名(2.3%),なし184名(90.6%),未記載8名(7.1%)であった。託児室が設置されていない場合は,あきらめる44名(21.6%),家族や知人に預ける144名(70.9%),一時預かり10名(4.9%),シッター依頼2名(0.9%)であった。
【考察】学会・研修会での託児室利用は子育て経験のある回答者のうち14.2%であり,本学術大会での利用は2.3%であった。託児室を設置する学会は近年増加傾向であるが,その利用率に関しての報告は非常に少なく,現時点でこの利用率が高いか低いかは不明である。よって,継続的な調査や報告が必要と考えられる。
また,託児室の利用に関して託児室が設置されていない場合は,約70%が家族や知人に預けると答えており,託児を依頼する選択肢は一つではない。しかし,約20%は参加をあきらめると回答しており,託児室の設置がなく,子供を家族に預けられなければ,約90%が参加をあきらめざるを得ない現状を表していた。学会・研修会により多くの会員が可能な限り子供を預けられる環境を整えていく事で参加者を増加させる可能性があると考えられた。
一方,託児室の利用料については,無料を希望する回答者が60.2%と多い反面,自治体と同程度の料金であれば有料でも良いと考えている会員が34.1%であった。託児室設置研修会の増加を検討していく上では,財源確保が問題となる可能性がある。託児室利用者数の推移や要望を調査しつつ,利用料の一部負担や他の方法での支援を検討していくことも必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】結婚や出産などのライフスタイルの変化により学会や研修会等への参加が困難な会員が多数存在する。託児所設置を継続して行っていく事で参加者が増加し,有能な人材の育成ができる可能性があると考えられる。