第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

臨床教育・管理運営

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-B-1142] 地域医療臨床現場での多職種間連携教育の取り組み

三浦早紀1, 小林修1, 山下政和1, 藤橋雄一郎2, 吉村学1 (1.揖斐郡北西部地域医療センター, 2.平成医療短期大学リハビリテーション学科理学療法専攻)

Keywords:多職種連携, 地域医療, 合宿形式

【はじめに,目的】
近年,保健・医療・福祉の分野で互いの連携不足による問題が指摘されている。それは教育課程において,連携について学ぶ機会が少ないことが一要因として考えられる。この問題に対して一部ではあるが,徐々に大学でも多職種間連携教育(Interprofessional Education:IPE)についての取り組みが行われるようになってきた。しかし,臨床現場が中心となって,IPEに取り組んでいるところはまだ少ない状態である。一方,理学療法教育では,1989年に理学療法士教育指定規則改正があり,社会的ニーズに対応することを目的として,チームワークの重要性を学ぶ項目が加わり,多職種連携に関する知識を取り入れているが,全体のカリキュラムの中で占める割合が低いのが現状である。
2009年から当センターでは,英国の専門職連携教育推進センター(Center of Advanced Interprofessional Education:CAIPE)の定義に基づき,臨床現場が主体となってIPEを行っている。具体的な内容として,多職種の学生がごちゃまぜになって,実際の事例を用いたグループワークを行う「短時間型IPE研修」を実施している。また,地域医療の現場でIPEを学ぶ企画として,合宿をしながら行う「合宿形式型IPE研修」も開催している。今回,当センターでは全国から参加者を募り,合宿形式型IPE研修会を開催した。その研修内容と取り組み,加えて参加者の感想を含め報告する。
【方法】
IPE研修会の参加者は16名(男性8名,女性8名)であった。職種別では医学生7名,看護学生4名,理学療法学生4名,言語聴覚学生1名であった。参加者を職種による偏りがないように2つのグループに分け,研修内ではグループ中心に研修を行った。研修は4泊5日の合宿形式にて行い,具体的な研修内容として,実例を多職種で検討する事例検討,他職種の現職者に同行する他職種同行研修,地域住民宅へホームステイ,地域住民に向けて「健康」をテーマにした発表を行い,地域住民と交流を図る健康座談会,当事者の方に講演してもらい,その課題に対して学生と現職者がごちゃまぜになってグループワークなどを実施した。研修最終日に,研修全体の振り返りをグループ内でまとめを行い発表した。
【結果】
参加者の振り返りより,「多職種間で情報共有,ディスカッションすることによって,新しい視点や考えが生まれ,多職種で連携していくことが当事者のプラスになると感じた」,「自分の専門職を他職種に理解してもらうと同時に,自分自身も他職種について知ることが大切だと感じた」,「学生時代からIPEを学ぶことは非常に意義があり,養成校でも座学中心の授業だけでなく,地域においてIPEを学ぶ機会があるとよい」,「1人の当事者に対して多くの職種が関わっていることを実感すると共に,他職種の役割を学べた」,「現場でしか得られないことが多く学べた」,「地域住民の温かさから学んだ,人と人との輪を職種間の連携にもつなげていきたい」などの感想があった。
【考察】
今回の「合宿形式型IPE研修」では,地域という現場で多職種の現職者だけではなく,地域住民も加わり,地域を巻き込んだ研修を開催した。事例検討や健康座談会の発表準備によるグループワークを通して,情報共有やディスカッションから互いの専門職の役割や多職種のつながりを学ぶことができたと考えられる。また,他職種同行研修において,実際の現場での他職種の仕事内容を直に見て体験することで,さらにその各職種の専門性を学ぶことができたと考えられる。地域住民宅へのホームステイや地域住民との健康座談会では,地域住民とふれあうことによりインフォーマルなつながりや地域の現状を学ぶ機会になったのではないだろうか。これらのことから,CAIPEの定義に基づいた多職種の学生が同じ場所で,互いの専門職について学ぶことの大切さを再確認できたと思う。また,地域の現場に多職種が共に一定期間身をおいて,地域住民や当事者と実際に接する機会を持つことで,より実践に近い学びができ,卒業後の現場をイメージすることができたと思う。臨床現場の環境を活かした研修は有効性があると思われる。
【理学療法学研究としての意義】
本報告は大学の倫理委員会で承認を受けており,全ての対象者には,本研究の計画書による説明を口頭および文書で行い,書面による同意を得た。また,同意書は2部作成し,1部は対象者,もう1部は検者が保管した。