[P3-C-0928] ヒトiPS細胞から作製された間葉系前駆細胞を利用した骨格筋疾患治療
キーワード:iPS細胞, 骨格筋疾患, 間葉系前駆細胞
【はじめに,目的】骨格筋中には血小板由来増殖因子受容体(PDGFRα)陽性の間葉系前駆細胞が存在している。これらの細胞は,筋ジストロフィー症の所見のひとつである骨格筋の線維化や脂肪化の原因細胞であるとする報告(Uezumi et al. nature cell biology(2010),Uezumi et al. Journal of Cell Science(2011))や,間葉系前駆細胞が産生する様々な分泌因子や細胞外基質が骨格筋の恒常性の維持や骨格筋再生に働いているとの報告がある。中でも,間葉系前駆細胞が産生する6型コラーゲン(COL6)は,サテライト細胞の活性化や骨格筋再生の促進に働くとの報告(Urciuolo et al. Nature communications(2013))があり,PDGFRα陽性の骨格筋間葉系前駆細胞の役割が様々な面から注目を集めている。また近年,当研究所においてヒトiPS細胞から間葉系間質細胞を作製する方法が新たに確立された。この方法によって確立されたヒトiPS由来間葉系間質細胞が,これまでに報告のあった生体骨格筋に由来する間葉系前駆細胞と同等の性質を有するかという点はいまだ不明である。そこで,ヒトiPS細胞由来間葉系間質細胞の性質を詳細に解析し,生体組織に由来する間葉系前駆細胞と同等の性質を有しているかを確認したうえで,最終的には難治性骨格筋疾患患者に対する移植治療等の新たな治療法確立へとつなげることを目的とした。
【方法】ヒトiPS細胞を特定の培養条件化で培養し,神経堤細胞neural crest cell(NCC)に由来する間葉系間質細胞mesenchymal stromal cell(MSC)を誘導した。誘導された細胞は生体外で維持培養され,細胞形態の変化や遺伝子発現形式が解析された。中でも特にPDGFRαとCOL6の二つの遺伝子発現と蛋白発現に注目し,生体組織に由来する間葉系前駆細胞との比較がなされた。さらに,これらのiPS細胞由来NC(hiPSC-NC)とMSC(hiPSC-MSC)を,骨格筋に損傷を加えた免疫不全マウス(NOD-SCID mouse)や骨格筋疾患モデルmouseへ移植し,移植先でこれらの細胞がどのように作用するか様々な面から解析を進めた。
【結果】ヒトiPS細胞に由来する間葉系前駆細胞の形態は,生体に由来する骨格筋間葉系前駆細胞と同様に紡錘形を示した。さらに,qPCRでの解析の結果,生体由来間葉系前駆細胞と同様の遺伝子発現形式が示された。また,hiPSC-NCとhiPSC-MSCの両方でCOL6のmRNA発現がみられたが,hiPSC-MSCにおいてその発現量がより高いことが示され,さらに,免疫蛍光染色による解析では,hiPSC-NCではCOL6が細胞質内に溜め込まれていた一方で,hiPSC-MSCでは産生されたCOL6が細胞外へ分泌され,フィブリル構造をとっていることが確認された。
【考察】当研究所でヒトiPS細胞から新たに作製されたNC由来間葉系前駆細胞(hiPS-MSC)は,これまでに報告のあった生体骨格筋に由来する間葉系前駆細胞と同等の性質を持った細胞である可能性が高まった。hiPS-MSCはCOL6のmRNA発現が高く,フィブリル構造をしたCOL6を産生し,細胞外へ分泌する能力も備わっていることが示されたため,この細胞は骨格筋再生促進や難治性骨格筋疾患の治療を目指した再生医療に応用が可能であると考える。今後は骨格筋サテライト細胞や骨格筋前駆細胞への作用を生体外共培養実験等でさらに詳細に調べ,様々な骨格筋疾患モデルへの移植実験を実施し,これらの細胞の臨床応用を目指す。
【理学療法学研究としての意義】このiPS細胞から作製された間葉系前駆細胞による骨格筋疾患に対する治療効果が明確に示されれば,難治性骨格筋疾患に対する新たな治療法確立へとつながる。さらに,細胞移植後の組織に対する理学療法学的アプローチを導入することで,再生医療分野における,理学療法学が果たす役割は大きいと考える。
【方法】ヒトiPS細胞を特定の培養条件化で培養し,神経堤細胞neural crest cell(NCC)に由来する間葉系間質細胞mesenchymal stromal cell(MSC)を誘導した。誘導された細胞は生体外で維持培養され,細胞形態の変化や遺伝子発現形式が解析された。中でも特にPDGFRαとCOL6の二つの遺伝子発現と蛋白発現に注目し,生体組織に由来する間葉系前駆細胞との比較がなされた。さらに,これらのiPS細胞由来NC(hiPSC-NC)とMSC(hiPSC-MSC)を,骨格筋に損傷を加えた免疫不全マウス(NOD-SCID mouse)や骨格筋疾患モデルmouseへ移植し,移植先でこれらの細胞がどのように作用するか様々な面から解析を進めた。
【結果】ヒトiPS細胞に由来する間葉系前駆細胞の形態は,生体に由来する骨格筋間葉系前駆細胞と同様に紡錘形を示した。さらに,qPCRでの解析の結果,生体由来間葉系前駆細胞と同様の遺伝子発現形式が示された。また,hiPSC-NCとhiPSC-MSCの両方でCOL6のmRNA発現がみられたが,hiPSC-MSCにおいてその発現量がより高いことが示され,さらに,免疫蛍光染色による解析では,hiPSC-NCではCOL6が細胞質内に溜め込まれていた一方で,hiPSC-MSCでは産生されたCOL6が細胞外へ分泌され,フィブリル構造をとっていることが確認された。
【考察】当研究所でヒトiPS細胞から新たに作製されたNC由来間葉系前駆細胞(hiPS-MSC)は,これまでに報告のあった生体骨格筋に由来する間葉系前駆細胞と同等の性質を持った細胞である可能性が高まった。hiPS-MSCはCOL6のmRNA発現が高く,フィブリル構造をしたCOL6を産生し,細胞外へ分泌する能力も備わっていることが示されたため,この細胞は骨格筋再生促進や難治性骨格筋疾患の治療を目指した再生医療に応用が可能であると考える。今後は骨格筋サテライト細胞や骨格筋前駆細胞への作用を生体外共培養実験等でさらに詳細に調べ,様々な骨格筋疾患モデルへの移植実験を実施し,これらの細胞の臨床応用を目指す。
【理学療法学研究としての意義】このiPS細胞から作製された間葉系前駆細胞による骨格筋疾患に対する治療効果が明確に示されれば,難治性骨格筋疾患に対する新たな治療法確立へとつながる。さらに,細胞移植後の組織に対する理学療法学的アプローチを導入することで,再生医療分野における,理学療法学が果たす役割は大きいと考える。