第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

人工膝関節

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-0990] 準WOMACによる人工膝関節全置換術後の健康関連QOLの経時的推移

片側罹患例における,術後6ヵ月までの検討

眞田祐太朗1, 椎木孝幸1, 森本毅2, 大澤傑2,3, 行岡正雄2,3 (1.行岡病院リハビリテーション科, 2.行岡病院整形外科, 3.大阪行岡医療大学医療学部)

Keywords:TKA, HRQOL, 準WOMAC

【目的】
健康関連QOL(以下,HRQOL)は,医療介入のアウトカムとして,受け手である患者の視点に立った指標である。その中でも,Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(以下,WOMAC)は,人工膝・股関節全置換術(以下,TKA・THA)の経時的評価指標として,国際的に最も使用されている。Hashimotoら(2003)は,このWOMACに準じた日本語スケール(以下,準WOMAC)を作成し,TKAにおける評価の妥当性を報告している。準WOMACを用いたTKAのHRQOLに関する先行研究については,術後短期間での検討が多く,評価時期についてもばらつきが認められることから,報告は散見されるものの十分とは言えない。また,罹患関節の違いによって評価結果にも影響が生じると考えられるが,対側の重症度について明記された報告は見当たらない。本研究の目的は,準WOMACを用いたTKA後6ヵ月までのHRQOLの経時的推移について,対側の重症度に配慮し,片側罹患および対側が軽度の両側罹患症例において検討することとした。
【方法】
対象は2012年10月から2014年1月までに,当院にて一次性内側型変形性膝関節症と診断され,同一術者において初回TKAを施行された17例17膝のうち,対側も手術適用(KL分類III以上)であった両側罹患例を除く10例10膝(全例女性,年齢71.1±4.3歳)とした。罹患関節は両側例が8例,片側例が2例であった。測定項目は,準WOMACの術側疼痛項目(以下,WOMAC-P)および身体機能項目(以下,WOMAC-F),日本整形外科学会OA膝治療成績判定基準(以下,JOA score),術側のVAS(動作開始時・歩行時・安静時),Timed Up and Go test(以下,TUG),術側の開眼片脚起立時間(以下,片脚起立)とした。測定期間は術前,術後3週,3ヵ月,6ヵ月とした。統計処理には,各測定項目の経時的推移について,Bonferroni法による多重比較を行い,有意水準は5%とした。また,WOMAC-PおよびWOMAC-Fにおける各項目の経時的推移について,平均値と標準偏差を算出し,順位付けを行った。
【結果】
WOMAC-Pによる疼痛評価は,術前:50.0±10.0点,術後3週:90.5±9.3点,3ヵ月:93.5±10.3点,6ヵ月:92.0±7.5点,VASによる動作開始時痛は,術前:5.3±2.4cm,術後3週:1.0±1.1cm,3ヵ月:0.5±0.6cm,6ヵ月:0.6±0.8cm,歩行時痛は,術前:7.6±1.4cm,術後3週:0.9±0.9cm,3ヵ月:0.5±0.7cm,6ヵ月:0.1±0.3cmであり,いずれも術前と比較して術後3週で有意に改善した(p<0.01)。WOMAC-Fによる身体機能評価は,術前:55.3±15.8点,術後3週:86.3±8.4点,3ヵ月:91.6±8.6点,6ヵ月:94.1±5.8点であり,術前と比較して術後3週で有意に改善した(p<0.01)。また,17項目の日常生活動作(以下,ADL)のうち,「階段を降りる」は,術前:4.0±0.8,術後3週:2.4±1.1,術後3ヵ月:2.0±0.9,術後6ヵ月:1.4±0.5であり,術前から術後3ヵ月にかけて最も困難であった。JOAは,術前:56.0±4.9点,術後3週:74.0±3.7点,3ヵ月:85.0±7.4点,6ヵ月:88.0±5.6点であり,術前から術後3週,術後3週から3ヵ月にかけて有意に改善した(p<0.01)。TUGは,術前:11.8±2.0秒,術後3週:11.2±1.3秒,3ヵ月:8.9±1.3秒,6ヵ月:8.3±0.8秒であり,術前と比較して術後3力月で有意に改善した(p<0.01)。片脚起立は,術前から術後6ヵ月まで有意な変化は認めなかった。
【考察】
Bachmeierら(2001)は,WOMACによる疼痛および身体機能は,術後3ヵ月以内に一定の水準に達すると報告している。本研究は先行研究を支持し,新たにVASとともに術後3週で改善することが確認された。これは,主訴であった関節原性の疼痛が手術によって改善したことで,ADLの困難感も改善したと考えられる。一方,客観的評価であるJOAやTUGの改善は,術後3ヵ月まで継続していたことから,実際の運動機能の改善には一定期間を要すると考えられる。「階段を降りる」動作について,畠中ら(1998)は,段差の降り動作中の膝関節モーメントは,術後12週にかけて改善したと報告している。本研究から,術後3週で改善を認めるものの,術後3ヵ月までは一定の困難感を抱いている傾向があることがわかった。このことから,「階段を降りる」動作の改善を図っていく上では,疼痛だけでなく,筋力低下や動作中の筋収縮形態を考慮した運動療法を行っていく必要性があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
片側罹患および対側が軽度の両側罹患症例における,準WOMACを用いたTKA後6ヵ月までのHRQOLの経時的推移を明らかにした。