[P3-C-1042] リハビリテーション領域におけるアウトカムの施設間比較
―FIM利得と補正FIM effectivenessを用いて―
キーワード:脳卒中, アウトカム, 施設間比較
【目的】
リハビリテーション領域ではアウトカムの施設間比較においてFIM利得がよく用いられている。FIM利得は開始時FIMが高い軽症例では天井効果にて利得が小さくなり,これに反し中等度介助例では利得は大きくなる。つまりFIM利得は開始時FIMの影響を受けやすい指標であり,単純に平均FIM利得を用いて施設間や地域間での比較することは適切でない。この点を考慮して徳永らは補正FIM effectivenessを用いた手法を推奨している。そこで本研究では,能登地域の脳卒中リハビリテーションを積極的に施行している病院におけるFIM利得と補正FIM effectivenessを検討し,施設間のアウトカムを比較したので報告する。なお,本研究におけるFIMの値はFIM総得点をもって示す。
【方法】
対象は2009年7月から2013年3月までに能登脳卒中地域連携パスに登録された脳卒中患者1,974例で,このうち①年齢95歳以上,②FIM悪化例,③入院期間14日以下,210日以上,④入院後再発例,⑤複数医療機関経由例,⑥クモ膜下出血例を除外した脳梗塞1,261例,脳内出血367例,計1,628例である。
1.各病院の比較
比較する病院は登録数の多い上位4病院とした。病院A(575例),B(565例),C(284例),D(204例)の4病院間で,年齢,発症から入院までの日数,在院日数,開始時FIM,退院時FIM,FIM利得,補正FIM effectivenessを比較した。比較にはKruskal-Wallis検定を用い,有意水準は5%未満とした。
2.全病院の補正FIMeffectiveness
三宮らの方法に準じ,全病院における開始時FIMを9点毎の階層に分けた。開始時FIMが81~125点の範囲ではFIM effectiveness[FIM利得/(126-開始時FIM)]の平均値は0.63でほぼ一定であったが,開始時FIMが18~80点の範囲では,開始時FIMが下がるほどFIM effectivenessの平均値は低下した。そこで,開始時FIMが18~80点の範囲でもFIM effectivenessの平均値がほぼ0.63となるようにFIM effectivenessの分母(126-開始時FIM)の126点を徳永らの方法に準じて,補正した。各病院の平均補正FIM effectivenessを算出し,比較した。比較にはKruskal-Wallis検定を用い,有意差が認められた場合はScheffeの多重比較を行なった。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の属性は男性894例,女性734例,平均年齢75.5±11.1歳,発症からの入院までの日数は0.79±3.22日,在院日数は62.4±47.3日,開始時FIMは65.4±35.7点,退院時FIMは85.1±38.4点,FIM利得は19.8±19.7点であった。
4病院間で年齢,在院日数,開始時FIM,退院時FIM,FIM利得で有意差を認めた(p<0.01)。補正FIM effectiveness=FIM利得/(X-開始時FIM)が0.63に近似するXの点数は18~26点,27~35点,36~44点,45~53点,54~62点,63~71点,72~80点でそれぞれ,41点,68点,86点,102点,115点,118点,122点であった。平均FIM利得は病院A~Dで,それぞれ24.0±20.6,16.7±18.6,20.1±18.4,16.2±20.0であり,4病院間で有意差を認めた(p<0.01)。また平均補正FIM effectivenessは病院A~Dで,それぞれ0.742,0.536,0.659,0.563であり,4病院間で有意差を認めた(p<0.01)。平均FIM利得および平均補正FIM effectivenessにおいても各病院での比較ではAとB間,AとD間で有意差を認めた(p<0.01)。各病院の順位は平均FIM利得では大きい順にA,C,B,D,平均補正FIM effectivenessではA,C,D,Bとなり,病院の順位はBとDが逆転した。
【考察】
徳永らの方法に準じ,重症度を補正した平均補正FIM effectivenessを用いて,4病院を比較した。その結果,4病院間で有意差を認め,回復期リハビリテーション病棟を有する病院Aは他病院に比し有意に高い数値を示した。平均FIM利得での比較でも同様の結果を示した。これは病院間での重症度の差が少なかったためと思われる。また平均FIM利得と平均補正FIM effectivenessでの病院の順位はBとDで順位が逆転した。要因として,患者数の多い開始時FIM:8~26点において,病院Bに比し病院DではFIMの改善率が高いの患者数が多かったためと考えられる。
今後の課題として,開始時FIMは発症後の初回では安静度を考慮し,FIMが低く評価されてしまうという現場の事情がある。また,三宮らは各病院の在院日数や年齢などの影響を補正できない点を指摘している。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーション領域における施設間比較により自院の特徴を評価する事は重要である。その指標となるADL改善度というアウトカムを適正に評価し,他施設との相違点を分析する事が対象者への貢献に繋がるものと思われる。
リハビリテーション領域ではアウトカムの施設間比較においてFIM利得がよく用いられている。FIM利得は開始時FIMが高い軽症例では天井効果にて利得が小さくなり,これに反し中等度介助例では利得は大きくなる。つまりFIM利得は開始時FIMの影響を受けやすい指標であり,単純に平均FIM利得を用いて施設間や地域間での比較することは適切でない。この点を考慮して徳永らは補正FIM effectivenessを用いた手法を推奨している。そこで本研究では,能登地域の脳卒中リハビリテーションを積極的に施行している病院におけるFIM利得と補正FIM effectivenessを検討し,施設間のアウトカムを比較したので報告する。なお,本研究におけるFIMの値はFIM総得点をもって示す。
【方法】
対象は2009年7月から2013年3月までに能登脳卒中地域連携パスに登録された脳卒中患者1,974例で,このうち①年齢95歳以上,②FIM悪化例,③入院期間14日以下,210日以上,④入院後再発例,⑤複数医療機関経由例,⑥クモ膜下出血例を除外した脳梗塞1,261例,脳内出血367例,計1,628例である。
1.各病院の比較
比較する病院は登録数の多い上位4病院とした。病院A(575例),B(565例),C(284例),D(204例)の4病院間で,年齢,発症から入院までの日数,在院日数,開始時FIM,退院時FIM,FIM利得,補正FIM effectivenessを比較した。比較にはKruskal-Wallis検定を用い,有意水準は5%未満とした。
2.全病院の補正FIMeffectiveness
三宮らの方法に準じ,全病院における開始時FIMを9点毎の階層に分けた。開始時FIMが81~125点の範囲ではFIM effectiveness[FIM利得/(126-開始時FIM)]の平均値は0.63でほぼ一定であったが,開始時FIMが18~80点の範囲では,開始時FIMが下がるほどFIM effectivenessの平均値は低下した。そこで,開始時FIMが18~80点の範囲でもFIM effectivenessの平均値がほぼ0.63となるようにFIM effectivenessの分母(126-開始時FIM)の126点を徳永らの方法に準じて,補正した。各病院の平均補正FIM effectivenessを算出し,比較した。比較にはKruskal-Wallis検定を用い,有意差が認められた場合はScheffeの多重比較を行なった。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の属性は男性894例,女性734例,平均年齢75.5±11.1歳,発症からの入院までの日数は0.79±3.22日,在院日数は62.4±47.3日,開始時FIMは65.4±35.7点,退院時FIMは85.1±38.4点,FIM利得は19.8±19.7点であった。
4病院間で年齢,在院日数,開始時FIM,退院時FIM,FIM利得で有意差を認めた(p<0.01)。補正FIM effectiveness=FIM利得/(X-開始時FIM)が0.63に近似するXの点数は18~26点,27~35点,36~44点,45~53点,54~62点,63~71点,72~80点でそれぞれ,41点,68点,86点,102点,115点,118点,122点であった。平均FIM利得は病院A~Dで,それぞれ24.0±20.6,16.7±18.6,20.1±18.4,16.2±20.0であり,4病院間で有意差を認めた(p<0.01)。また平均補正FIM effectivenessは病院A~Dで,それぞれ0.742,0.536,0.659,0.563であり,4病院間で有意差を認めた(p<0.01)。平均FIM利得および平均補正FIM effectivenessにおいても各病院での比較ではAとB間,AとD間で有意差を認めた(p<0.01)。各病院の順位は平均FIM利得では大きい順にA,C,B,D,平均補正FIM effectivenessではA,C,D,Bとなり,病院の順位はBとDが逆転した。
【考察】
徳永らの方法に準じ,重症度を補正した平均補正FIM effectivenessを用いて,4病院を比較した。その結果,4病院間で有意差を認め,回復期リハビリテーション病棟を有する病院Aは他病院に比し有意に高い数値を示した。平均FIM利得での比較でも同様の結果を示した。これは病院間での重症度の差が少なかったためと思われる。また平均FIM利得と平均補正FIM effectivenessでの病院の順位はBとDで順位が逆転した。要因として,患者数の多い開始時FIM:8~26点において,病院Bに比し病院DではFIMの改善率が高いの患者数が多かったためと考えられる。
今後の課題として,開始時FIMは発症後の初回では安静度を考慮し,FIMが低く評価されてしまうという現場の事情がある。また,三宮らは各病院の在院日数や年齢などの影響を補正できない点を指摘している。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーション領域における施設間比較により自院の特徴を評価する事は重要である。その指標となるADL改善度というアウトカムを適正に評価し,他施設との相違点を分析する事が対象者への貢献に繋がるものと思われる。