[P3-C-1058] 脳卒中片麻痺患者に対する回旋他動運動が歩行動作に及ぼす影響
―歩行動作時の下肢関節の動きから―
キーワード:脳卒中片麻痺患者, 回旋運動, 歩行動作
【はじめに,目的】
我々は第49回日本理学療法学術大会において,脳卒中片麻痺症状を呈する患者に対して,立位姿勢から非麻痺側下肢を前に踏み出した状態から,体幹下部(骨盤)麻痺側回旋・体幹上部(胸郭)非麻痺側回旋・頸部麻痺側回旋の他動運動(以下,ねじり運動)を実施。その後の任意歩行において,麻痺側ステップ長を含むストライド長の有意な増加および歩隔の有意な減少が認められたことを報告した(以下,先行研究)。今回これらの内容をより科学的に具体化するために,歩行動作時の動画解析により麻痺側下肢における関節の動きも合わせて測定したので文献的考察を加えて報告する。
【方法】
被験者は下肢装具なしにて15m以上の独歩可能な脳卒中片麻痺症状を呈する患者15名とした。被験者に対してまず,インターリハ社製ゼブリス高機能型圧分布計測システム(以下,Win FDM)上で出来るだけ早く歩く(早歩)よう指示。その後ねじり運動を施行。数秒後に患者自身のタイミングにてWin FDM上での早歩を実施した。なお,歩行測定中は理学療法士による監視を常に行い安全性には最大限の配慮を行った。ねじり運動前後における歩行動作はWin FDMおよびCASIO社製ビデオカメラ(HS EX-FH100)にて連続測定し,そこから出力される動作時の信号をコンピューターに取り込んだ後,インターリハ社製解析用FDM Gaitソフトウェアおよび東総システム社製動画解析システムTOMOCO Liteにより時系列データとして算出した。そして,麻痺側および非麻痺側におけるステップ長,ストライド長,ケーデンス,歩行速度,歩隔および歩行周期における股関節・膝関節・足関節の関節角度および関節角速度を測定し分析項目とした。ねじり運動前後における歩行動作の変化に差があるかを調べるために,データの正規性を確認してからt検定による分析を用い有意水準を5%未満として解析を行った。なお統計学的解析には,Microsoft社製表計算等ソフトウェア(Microsoft Excel 2010)の分析ツールを使用した。
【結果】
ねじり運動後の歩行動作において,麻痺側(P<0.05)および非麻痺側ステップ長(P<0.01),ストライド長(P<0.01),ケーデンス(P<0.05),歩行速度(P<0.01)の有意な増加および歩隔(P<0.05)の有意な減少が認められた。また,麻痺側股関節の動きに関しては遊脚後期における股関節屈曲角度(P<0.01)の有意な増加,麻痺側膝関節の動きに関しては遊脚前期における膝関節屈曲角度(P<0.01)および膝関節屈曲角速度(P<0.05)の有意な増加,麻痺側足関節の動きに関しては立脚後期における足関節底屈角度(P<0.01)の有意な増加が認められた。
【考察】
本研究結果では,ねじり運動前後の歩行動作において,麻痺側および非麻痺側ステップ長を含むストライド長・ケーデンス・歩行速度の有意な増加および歩隔の有意な減少が認められ,先行研究同様,ねじり運動が歩行機能に好影響を及ぼしていることが示された。また,ねじり運動前後における歩行動作時の麻痺側下肢関節の動きに関して,麻痺側股関節では遊脚後期における股関節屈曲角度の有意な増加,麻痺側膝関節では遊脚前期における膝関節屈曲角度および膝関節屈曲角速度の有意な増加,麻痺側足関節では立脚後期における足関節底屈角度の有意な増加が認められた。このことから,ねじり運動実施後の歩行動作は,麻痺側下肢立脚中期以降における足部の踏み返し機能の向上,それに伴う膝関節屈曲運動による振出し機能の向上,そして麻痺側ステップ長を含むストライド機能の向上が示唆された。脳卒中片麻痺患者に特徴的な骨盤回旋運動低下は,麻痺側股関節運動の低下を生じ,麻痺側下肢立脚中期以降における足部の踏み返しがうまく行えない不効率な歩行を呈していることは諸家の報告でも多数述べられている。今回,脳卒中片麻痺患者に対して,骨盤から胸郭・頸部への回旋他動運動を実施することで,麻痺側下肢の推進力向上が図れたものと推測されるが,我々は本研究結果から立脚期後期から遊脚期における膝関節屈曲運動の変化が重要であると認識している。発表では本実験結果をさらに具体的に考察していきたいと考えている。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者に対して,頸部・胸郭・骨盤への回旋他動運動が麻痺側下肢の推進力向上を促し,歩行機能を改善する可能性を示した。本研究結果は,理学療法学研究として意義があり,臨床場面や在宅場面における日常生活指導をする上で有効性が期待される。
我々は第49回日本理学療法学術大会において,脳卒中片麻痺症状を呈する患者に対して,立位姿勢から非麻痺側下肢を前に踏み出した状態から,体幹下部(骨盤)麻痺側回旋・体幹上部(胸郭)非麻痺側回旋・頸部麻痺側回旋の他動運動(以下,ねじり運動)を実施。その後の任意歩行において,麻痺側ステップ長を含むストライド長の有意な増加および歩隔の有意な減少が認められたことを報告した(以下,先行研究)。今回これらの内容をより科学的に具体化するために,歩行動作時の動画解析により麻痺側下肢における関節の動きも合わせて測定したので文献的考察を加えて報告する。
【方法】
被験者は下肢装具なしにて15m以上の独歩可能な脳卒中片麻痺症状を呈する患者15名とした。被験者に対してまず,インターリハ社製ゼブリス高機能型圧分布計測システム(以下,Win FDM)上で出来るだけ早く歩く(早歩)よう指示。その後ねじり運動を施行。数秒後に患者自身のタイミングにてWin FDM上での早歩を実施した。なお,歩行測定中は理学療法士による監視を常に行い安全性には最大限の配慮を行った。ねじり運動前後における歩行動作はWin FDMおよびCASIO社製ビデオカメラ(HS EX-FH100)にて連続測定し,そこから出力される動作時の信号をコンピューターに取り込んだ後,インターリハ社製解析用FDM Gaitソフトウェアおよび東総システム社製動画解析システムTOMOCO Liteにより時系列データとして算出した。そして,麻痺側および非麻痺側におけるステップ長,ストライド長,ケーデンス,歩行速度,歩隔および歩行周期における股関節・膝関節・足関節の関節角度および関節角速度を測定し分析項目とした。ねじり運動前後における歩行動作の変化に差があるかを調べるために,データの正規性を確認してからt検定による分析を用い有意水準を5%未満として解析を行った。なお統計学的解析には,Microsoft社製表計算等ソフトウェア(Microsoft Excel 2010)の分析ツールを使用した。
【結果】
ねじり運動後の歩行動作において,麻痺側(P<0.05)および非麻痺側ステップ長(P<0.01),ストライド長(P<0.01),ケーデンス(P<0.05),歩行速度(P<0.01)の有意な増加および歩隔(P<0.05)の有意な減少が認められた。また,麻痺側股関節の動きに関しては遊脚後期における股関節屈曲角度(P<0.01)の有意な増加,麻痺側膝関節の動きに関しては遊脚前期における膝関節屈曲角度(P<0.01)および膝関節屈曲角速度(P<0.05)の有意な増加,麻痺側足関節の動きに関しては立脚後期における足関節底屈角度(P<0.01)の有意な増加が認められた。
【考察】
本研究結果では,ねじり運動前後の歩行動作において,麻痺側および非麻痺側ステップ長を含むストライド長・ケーデンス・歩行速度の有意な増加および歩隔の有意な減少が認められ,先行研究同様,ねじり運動が歩行機能に好影響を及ぼしていることが示された。また,ねじり運動前後における歩行動作時の麻痺側下肢関節の動きに関して,麻痺側股関節では遊脚後期における股関節屈曲角度の有意な増加,麻痺側膝関節では遊脚前期における膝関節屈曲角度および膝関節屈曲角速度の有意な増加,麻痺側足関節では立脚後期における足関節底屈角度の有意な増加が認められた。このことから,ねじり運動実施後の歩行動作は,麻痺側下肢立脚中期以降における足部の踏み返し機能の向上,それに伴う膝関節屈曲運動による振出し機能の向上,そして麻痺側ステップ長を含むストライド機能の向上が示唆された。脳卒中片麻痺患者に特徴的な骨盤回旋運動低下は,麻痺側股関節運動の低下を生じ,麻痺側下肢立脚中期以降における足部の踏み返しがうまく行えない不効率な歩行を呈していることは諸家の報告でも多数述べられている。今回,脳卒中片麻痺患者に対して,骨盤から胸郭・頸部への回旋他動運動を実施することで,麻痺側下肢の推進力向上が図れたものと推測されるが,我々は本研究結果から立脚期後期から遊脚期における膝関節屈曲運動の変化が重要であると認識している。発表では本実験結果をさらに具体的に考察していきたいと考えている。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者に対して,頸部・胸郭・骨盤への回旋他動運動が麻痺側下肢の推進力向上を促し,歩行機能を改善する可能性を示した。本研究結果は,理学療法学研究として意義があり,臨床場面や在宅場面における日常生活指導をする上で有効性が期待される。