第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター3

支援工学理学療法1

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1093] 障がい者の自動車運転再開へ向けた取り組み(第3報)

47都道府県へのアンケート調査

佐藤努1, 佐藤絢1, 木幡修1, 紺野聖1, 高橋美貴1, 砂川真奈美1, 鈴木宏幸1, 坂田真也1, 江井邦夫2 (1.福島医療生協わたり病院リハビリテーション科, 2.公立相馬総合病院リハビリテーション科)

Keywords:障がい者, 自動車運転再開, アンケート調査

【はじめに,目的】
障がい者の積極的な社会参加や就労促進において自動車運転の可否は,移動手段として大きな影響を与える要因となっている。自動車運転は,必要に応じた環境適応能力や状況判断能力が求められ,運転技能や高次脳機能,知的機能,視覚機能など様々な機能を必要とされており,理学療法士の果たす役割は重要である。また,安全な運転再開には,行政機関を含めた各関係機関(各自治体・警察署・自動車学校等)との体制づくりが必要であると考える。今回,各行政機関(47都道府県)が抱える障がい者の自動車運転再開への現状および課題を把握する目的として,アンケート調査を実施した。
【方法】
市町村を包括する広域の地方行政機関(1都1道2府43県)47箇所を対象としアンケート調査を実施した。アンケート内容は,障がい者自動車運転等における助成制度の有無や障がい者自動車運転における取り組み,相談窓口の有無,専門職の有無などの16項目について質問を実施した。また,平成26年5月20日から6月21日までの約1ヶ月間を回収期間とした。
【結果】
回答数は,全47箇所中16箇所で回答率は34.0%であった。障がい者自動車運転に関係する助成制度は,12箇所で実施していた。各自治体において障がい者自動車運転等における対応部署の有無に関しては,7箇所が有りと回答した。また,障がい者自動車運転等における取り組みにおいては,わずか2箇所であった。具体的には,関係機関との話し合いが1箇所,研修会開催が1箇所,啓発活動が1箇所であった。さらに,各関係機関(警察署・自動車学校)との連携は3箇所であった。相談窓口の設置においては5箇所で,相談件数は年間5件未満が2箇所,10件以上20件未満が2箇所,無回答が1箇所であった。具体的な相談内容に関しては,助成制度等に関して3箇所,自動車運転等に関して1箇所,運転免許等1箇所,把握していないは1箇所であった。専門職の配置に関しては1箇所(作業療法士)であり,研修会の開催,自動車運転における相談,関係機関との関わり等が主な役割との回答であった。助成制度および相談等において,市町村が窓口であると回答した自治体が2箇所であった。
【考察】
自動車運転を安全に再開するにあたり,運転技術面(身体機能等)や判断能力面(高次脳機能等)に加え,制度上(道路交通法)の問題が存在し積極的な運転再開には至っていないのが現状である。また,自治体を含む各関係機関(警察署・医療機関等)における連携も乏しく,自動車運転再開を果たすための体制づくりは,現状として不十分であると言える。平成26年6月より改正道路交通法が一部施行され,一定の病気の症状がある運転者への対策が行われている。しかし,各自治体においての取り組み(研修会の開催・啓発活動等)や対応等はさまざまであり,確立されているとは言い難い。今後,現状における課題を含め体制づくりを強化する必要性が示唆された。具体的な体制づくりを進めるにあたり,行政機関を含む各関係機関がそれぞれの役割を明確化し,連携を図ることによりスムースな自動車運転再開が可能になると思われる。また,各行政機関との連携を図る上で,行政機関においても理学療法士等の専門職を配置し,制度上の相談や障害内容に適した車両改造,運転支援装置等の必要に応じた具体的な指導や助言,啓蒙活動を進めていくことが望ましいと思われる。
【理学療法学研究としての意義】
自動車運転リハビリテーションは,運転技能(身体機能面・判断能力面)の評価,アプローチを行うリハビリテーション分野の一つと言える。安全な運転再開において,様々な領域の関係機関が共通認識を持ち,連携を図ることが必要である。今回のアンケート調査は,包括的なシステム構築を進めるにあたり重要であると言える。