[P3-C-1101] 在宅脳卒中片麻痺者の下肢装具フォローアップへ向けた理学療法士の役割
介護支援専門員への下肢装具アンケート調査
Keywords:下肢装具, アンケート, フォローアップ
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺者が使用する短下肢装具(以下,AFO)には耐用年数が決められており,長期的な使用により摩耗や破損する可能性がある。不適当なAFOを使用することは使用者の転倒などの事故に繋がるため,AFO作製後のフォローアップは重要かつ早急に対応すべき課題であると考える。AFOに関する卒前教育を受け,装具療法を実践する理学療法士(以下,PT)であればAFOの不具合に対しても容易に気づくと考える。しかしAFO使用者に必ずしもPTが関与しているとは限らない。またAFO作製後の追跡調査として,使用者本人やその家族への調査研究は散見されるが,使用者本人が質問に回答が出来ない場合や介護者が存在しない場合もある。そこで今回介護保険領域で利用者支援の中心的な役割を担う介護支援専門員(以下,CM)に対してAFOに関するアンケート調査を実施し,AFOのフォローアップへ向けてPTの役割を検討した。
【方法】
対象は当法人の居宅介護支援事業所に所属するCM10名(平均経験年数6.0±3.4年)とリハビリテーション科に所属するPT23名(平均経験年数3.0±2.7年)とした。アンケート内容は①日常生活活動(以下,ADL)におけるAFOの利点,②ADLにおけるAFOの欠点,③AFOの必要度,④AFO使用理由の理解度,⑤AFOの着目度とし,CMには設問①から⑥,PTには設問①から②を調査した。設問①と②のADLの選択肢はFunctional Independence Measureの運動項目13項目とし,選択なしも含む複数回答形式にて実施した。各選択肢をFisher’s exact testを用いて2群間の差を検討した。また対象者一人あたりの利点・欠点の選択数も算出し2群間の差をMann WhitneyのU検定を用いて検討した。統計処理は統計ソフトIBM SPSS Statistics 22.0を使用し,有意水準は5%とした。設問③から⑤は単一回答形式とし5段階の順序をつけた選択肢とすることで,各選択肢の人数の割合を算出した。さらに設問⑤に関しては「気にする」「どちらかといえば気にする」を選択した者に着目部位を6項目(全体,ベルト,足底,フィッティング,角度,その他)の中から複数回答形式にて調査した。
【結果】
設問①と②におけるADLの13項目では2群間で統計学的な有意差を認めなかった。また対象者一人あたりの項目選択数は利点でCM3.2±1.9個,PT4.3±2.0個,欠点でCM1.3±1.2個,PT1.1±0.9個となり2群間に差を認めなかった。設問③は「必要」40%,「どちらかといえば必要」50%,「どちらでもない」10%「どちらかといえば不要」「不要」は0%,設問④は「理解している」30%,「どちらかといえば理解している」50%,「どちらでもない」10%,「どちらかといえば理解していない」10%,「理解しいていない」0%,設問⑤は「気にする」20%,「どちらかといえば気にする」50%,「どちらでもない」30%,「どちらかといえば気にしない」「気にしない」は0%であった。設問⑤のAFOの着目部位(有効回答者8/10名)は「全体」37.5%,「ベルト」37.5%,「足底」25%,「フィッティング」62.5%,「角度」0%,「その他」25%であった。
【考察】
当法人居宅CMのADLにおけるAFOの利点・欠点の認識は卒前にAFOについて教育を受け,装具療法を実践するPTと差がなかった。さらに脳卒中片麻痺者にとってAFOが必要であると考えており,その使用理由も概ね理解していた。またPTの専門的知識が必要とされる装具療法時のAFO角度設定など以外の項目,具体的にはAFO全体の様子やフィッティング,ベルトなどはCMでも着目していることが示されている。大垣らによると病院退院後のAFO使用者のうち約1割は何らかの不適合状態でAFOを使用していると報告している。そこでPTからCMに対してAFOの摩耗や破損時の対応方法の流れを説明する事で,介護保険領域においてPTが関与していない場合や介護者が存在せず相談場所に難渋する場合のAFO使用者のフォローアップが可能になると推察する。ただし本研究の限界として,今回の対象者のような法人内に回復期リハビリテーション病棟を有している居宅のCMである事やCM資格取得前の職種,CMが連携をとる多職種との関わりに結果が左右される可能性が推察される。また地域によるAFOの認識の違いやサービス格差も存在するため,職種間だけでなく地域別の連携を考慮したAFOフォローアップの検討も必要である。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアシステムの導入により医療・介護における多職種連携の重要性も求められている。そこで介護保険領域で利用者支援の中心的な役割を担うCMのAFOに対する認識を明らかにし,PTからCMへ向けた連携を図る事が不適当なAFO使用者のフォローアップを可能にすると考える。
脳卒中片麻痺者が使用する短下肢装具(以下,AFO)には耐用年数が決められており,長期的な使用により摩耗や破損する可能性がある。不適当なAFOを使用することは使用者の転倒などの事故に繋がるため,AFO作製後のフォローアップは重要かつ早急に対応すべき課題であると考える。AFOに関する卒前教育を受け,装具療法を実践する理学療法士(以下,PT)であればAFOの不具合に対しても容易に気づくと考える。しかしAFO使用者に必ずしもPTが関与しているとは限らない。またAFO作製後の追跡調査として,使用者本人やその家族への調査研究は散見されるが,使用者本人が質問に回答が出来ない場合や介護者が存在しない場合もある。そこで今回介護保険領域で利用者支援の中心的な役割を担う介護支援専門員(以下,CM)に対してAFOに関するアンケート調査を実施し,AFOのフォローアップへ向けてPTの役割を検討した。
【方法】
対象は当法人の居宅介護支援事業所に所属するCM10名(平均経験年数6.0±3.4年)とリハビリテーション科に所属するPT23名(平均経験年数3.0±2.7年)とした。アンケート内容は①日常生活活動(以下,ADL)におけるAFOの利点,②ADLにおけるAFOの欠点,③AFOの必要度,④AFO使用理由の理解度,⑤AFOの着目度とし,CMには設問①から⑥,PTには設問①から②を調査した。設問①と②のADLの選択肢はFunctional Independence Measureの運動項目13項目とし,選択なしも含む複数回答形式にて実施した。各選択肢をFisher’s exact testを用いて2群間の差を検討した。また対象者一人あたりの利点・欠点の選択数も算出し2群間の差をMann WhitneyのU検定を用いて検討した。統計処理は統計ソフトIBM SPSS Statistics 22.0を使用し,有意水準は5%とした。設問③から⑤は単一回答形式とし5段階の順序をつけた選択肢とすることで,各選択肢の人数の割合を算出した。さらに設問⑤に関しては「気にする」「どちらかといえば気にする」を選択した者に着目部位を6項目(全体,ベルト,足底,フィッティング,角度,その他)の中から複数回答形式にて調査した。
【結果】
設問①と②におけるADLの13項目では2群間で統計学的な有意差を認めなかった。また対象者一人あたりの項目選択数は利点でCM3.2±1.9個,PT4.3±2.0個,欠点でCM1.3±1.2個,PT1.1±0.9個となり2群間に差を認めなかった。設問③は「必要」40%,「どちらかといえば必要」50%,「どちらでもない」10%「どちらかといえば不要」「不要」は0%,設問④は「理解している」30%,「どちらかといえば理解している」50%,「どちらでもない」10%,「どちらかといえば理解していない」10%,「理解しいていない」0%,設問⑤は「気にする」20%,「どちらかといえば気にする」50%,「どちらでもない」30%,「どちらかといえば気にしない」「気にしない」は0%であった。設問⑤のAFOの着目部位(有効回答者8/10名)は「全体」37.5%,「ベルト」37.5%,「足底」25%,「フィッティング」62.5%,「角度」0%,「その他」25%であった。
【考察】
当法人居宅CMのADLにおけるAFOの利点・欠点の認識は卒前にAFOについて教育を受け,装具療法を実践するPTと差がなかった。さらに脳卒中片麻痺者にとってAFOが必要であると考えており,その使用理由も概ね理解していた。またPTの専門的知識が必要とされる装具療法時のAFO角度設定など以外の項目,具体的にはAFO全体の様子やフィッティング,ベルトなどはCMでも着目していることが示されている。大垣らによると病院退院後のAFO使用者のうち約1割は何らかの不適合状態でAFOを使用していると報告している。そこでPTからCMに対してAFOの摩耗や破損時の対応方法の流れを説明する事で,介護保険領域においてPTが関与していない場合や介護者が存在せず相談場所に難渋する場合のAFO使用者のフォローアップが可能になると推察する。ただし本研究の限界として,今回の対象者のような法人内に回復期リハビリテーション病棟を有している居宅のCMである事やCM資格取得前の職種,CMが連携をとる多職種との関わりに結果が左右される可能性が推察される。また地域によるAFOの認識の違いやサービス格差も存在するため,職種間だけでなく地域別の連携を考慮したAFOフォローアップの検討も必要である。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアシステムの導入により医療・介護における多職種連携の重要性も求められている。そこで介護保険領域で利用者支援の中心的な役割を担うCMのAFOに対する認識を明らかにし,PTからCMへ向けた連携を図る事が不適当なAFO使用者のフォローアップを可能にすると考える。