[SS-01-3] 歩行の視覚運動制御
一口に歩行といっても,歩き方や路面環境によって実に多様な動きのパターンがある。こうした歩行の多様性を考えると,歩行の制御とは,決して“理想的な歩行の型”を覚えこみ,それを忠実に実践するような様式に基づいてはいない。身体状況や路面環境を正確に知覚し,それに基づき適切に歩行パターンを調整する能力に基づき,歩行パターンが生成されると考えられる。こうした知覚的な調整は,2つの方式に大別される。一つは,バランスが崩れそうになったときに,それを元に戻そうとする方式である。もう一つは,バランスの崩れが予見されるとき,そうしたことが起こらないように未然に対処する方式である。本話題提供では,後者の予期的な調整の方式が,視覚情報に基づいて実行され,安全な歩行の実現に寄与していることについて,様々な研究成果を紹介する。
歩行中は,前方への移動に伴って自己と環境との空間関係が常に変化する。このため,歩行においては常に遠方の状況を早期に知覚し,それに合わせて行動を予期的に調整する必要がある。こうした予期的な制御においては視覚情報が極めて重要な役割を持っている。本話題提供の前半では,移動行動中に得られる動的視覚情報に基づき,安全な移動行動が実現されるプロセスについて,隙間通過行動に着目した研究成果を紹介する。一連の成果から,視覚的に得られた環境の空間情報は,脳内で身体との相対関係に瞬時に変換され,適切な行動の選択に寄与していることがわかる。
転倒危険性の高い高齢者や脳卒中片麻痺者の場合,歩行中に視線が足元に落ち,遠方の状況に基づく予期的な制御を行っていないと思われるケースが散見される。本題提供の後半では,こうしたケースに対する実験心理学的・行動科学的検証の成果について紹介,転倒やバランス機能低下との関連性について議論する。
歩行中は,前方への移動に伴って自己と環境との空間関係が常に変化する。このため,歩行においては常に遠方の状況を早期に知覚し,それに合わせて行動を予期的に調整する必要がある。こうした予期的な制御においては視覚情報が極めて重要な役割を持っている。本話題提供の前半では,移動行動中に得られる動的視覚情報に基づき,安全な移動行動が実現されるプロセスについて,隙間通過行動に着目した研究成果を紹介する。一連の成果から,視覚的に得られた環境の空間情報は,脳内で身体との相対関係に瞬時に変換され,適切な行動の選択に寄与していることがわかる。
転倒危険性の高い高齢者や脳卒中片麻痺者の場合,歩行中に視線が足元に落ち,遠方の状況に基づく予期的な制御を行っていないと思われるケースが散見される。本題提供の後半では,こうしたケースに対する実験心理学的・行動科学的検証の成果について紹介,転倒やバランス機能低下との関連性について議論する。