第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム1

ウィメンズヘルス・メンズヘルス

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 1:10 PM 第4会場 (ホールB7(2))

座長:谷口千明(放射線第一病院 リハビリテーション科)

[TS-01-1] 性差とライフステージを考慮した健康支援~性差医療の現場から~

小宮ひろみ (福島県立医科大学性差医療センター)

「性差医療」とは「性差とライフステージを意識したきめ細やかな医療」であり,「男女比が圧倒的に一方に傾いている病態,発症率はほぼ同じでも,男女間で臨床的に差をみるもの,いまだ生理的,生物学的解明が男性または女性で遅れている病態,社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究を進め,その結果を疾病の診断,治療法,予防措置へ反映することを目的とした医療」と定義付けられている。これまでの医療は生殖器以外あまり性差を意識することがなかったが,近年,ジェンダー視点を含む性差を意識した医療・健康支援の重要性が認識されつつある。
性差医療の歴史はまだ浅い。米国で1960年代サリドマイドや,1970年代diethylstilbestrol(DES)薬害事件のため,1977年アメリカ食品医薬品局は妊娠の可能性のある女性を新薬の知見に参加させないように通達をだした。1980年代に,女性の健康に関するデータの少なさが指摘されたことを契機に,国家レベルで女性に特有な病態についての生物学的研究が推進された。こうして米国では性差を意識した女性医療がめざましい発展をとげた。日本には,1999年に初めて導入され,その医療を実践する場として「女性外来」「男性外来」が全国に設置されている。
性差は性染色体,性ホルモン,生殖器,ジェンダーから形成される。特に性ホルモンの果たす役割は大きい。男女とも性ホルモンの特徴を熟知し,その有益性を最大限に生かすことが重要である。さらにライフステージとそれぞれのステージで気をつけるべき疾患・病態を意識かつ十分に理解し,生涯を通して,性差を意識しながら健康作り・支援を行うことが必要であると考える。また,性差医療ではジェンダーの視点を重視する。私はこの10年性差医療に携わり,「性差医療」やその実践現場である「性差を意識した外来」の必要性を強く感じている。本会では,性差医療の総論とその必要性を講演させていただきたい。