第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム2

理学療法の核を問う コア・パラダイムに迫る

Fri. Jun 5, 2015 12:20 PM - 1:30 PM 第1会場 (ホールA)

座長:大橋ゆかり(茨城県立医療大学 理学療法学科)

[TS-02-1] 臨床理学療法領域におけるコア・パラダイム―筋力トレーニングにおけるパラダイムシフト―

市橋則明 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

パラダイムとは,特定の科学の基礎となっている,支配的な理論的枠組みを意味する。Kumarは理学療法におけるパラダイムについて,特定の分野においての方向性や戦略を決定するためのモデルであるとし,理学療法の臨床上のパラダイムとしては,3つの要素があるとしている。一つ目はサイエンスであり,疾患を理解し,対峙する行動である。2つ目はアートであり,多義性に満ちた患者の人格を対象とするものである。3つ目は信仰であり,イデオロギーや価値観,倫理観であると述べている。また,Plackは理学療法研究について述べた論文の中で,パラダイムとは,ヘルスケアの分野においては,比較対照試験(RCT)やメタアナリシスといった客観的事実により答えを導き出すことができるサイエンスの要素があるとしている。一方でヘルスケアの実践の核心は人間性についての学問であり,個としての人,社会の中の人に科学が与えうる影響を知ることであるという。エビデンスに基づく医療は理学療法において不可欠であるが,エビデンスと人との関連性の複雑さを理解することなしには,不完全なものであるとしている。このように臨床理学療法領域でのパラダイムとは,サイエンスだけでなくアートも重要な要素である。
理学療法においては証明もされていないにもかかわらず,パラダイムとなっているものや,明確な証拠も示さず過去を否定し,新たなパラダイムが示されることも多い。理学療法におけるパラダイムが明確でないのが現状であるので,本講演では,現在の理学療法で支配的な理論をパラダイムとし,理学療法士が最も関わることが多い,筋力トレーニングのパラダイムとパラダイムシフトに関して話題を提供したい。