第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム2

理学療法の核を問う コア・パラダイムに迫る

Fri. Jun 5, 2015 12:20 PM - 1:30 PM 第1会場 (ホールA)

座長:大橋ゆかり(茨城県立医療大学 理学療法学科)

[TS-02-2] 基礎理学療法領域におけるコア・パラダイム

沖田実 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学分野)

理学療法士及び作業療法士法の第2条において、「理学療法とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されている。つまり、この定義からも明らかなように、基本的動作能力の回復を図ることが理学療法のコア(核)といえ、目指すべき目的であることは疑う余地がない。
では、基本的動作能力を獲得するためにはどのような要素が不可欠となるのであろうか。例えば、関節可動域(range of motion:以下、ROM)はその一つであり、先行研究では基本的動作の遂行に必要となる四肢のROMについて明らかにされており、そのデータはROM制限に対する治療目標といえる。しかし、その治療は効果的に行われているといえるのだろうか。リハビリテーションの対象患者144名の四肢・体幹の16関節のROMを調査された結果では、平均11関節(約7割)にROM制限が認められており、終末期リハビリテーションを担う施設では重篤なROM制限を抱えたまま入所となる障害高齢者が増加傾向にあるという。つまり、このような臨床成績では理学療法のコアとなっている基本的動作能力の回復には結びつかない可能性がある。歴史的にみて理学療法は経験則から発展してきた治療技術であり、科学的根拠に基づいて治療技術を適用していく思考には欠けていたことは否めない。そして、その根底にはROM制限をはじめとした各種の機能障害の病態や発生メカニズムの解明が立ち後れていることが影響していると思われ、その意味で今後、基礎研究の意義ならびに役割は大きいと考えている。そこで、本シンポジウムでは基礎研究の意義とその成果の実例を紹介しながら、理学療法のコアを支えるパラダイムについて問い直してみたい。