第50回日本理学療法学術大会

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大会シンポジウム

大会シンポジウム4

これからの理学療法研究―世界への発信―

Sat. Jun 6, 2015 10:15 AM - 12:05 PM 第2会場 (ホールC)

座長:黒木裕士(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻理学療法学講座)

[TS-06-1] 神経科学理学療法研究の立場から

森岡周 (畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

人間の脳を可視化できる脳イメージング技術の進歩に伴い,情動,運動,感覚,記憶等の機能に関する神経科学的解明が進んでいる。一方,遺伝子,分子,シナプス可塑性等の動物実験から,機能回復や学習に重要な因子や最適な環境がわかってきた。このような神経科学研究は生理学の範疇だけでなく,様々な学問や応用技術の基盤となりつつある。
リハビリテーション科学においても例外でない。この流れから生まれた用語がニューロリハビリテーションである。成書によれば,ニューロリハビリテーションは「神経系の損傷あるいは疾患によって起こる機能障害の回復を最大限に引き起こす臨床専門分野である」と定義されている。このように対象を神経障害に限ったNeurological rehabilitationでなく,運動制御・学習等に関する科学的知見も積極的に取り入れ,対象を運動器疾患や疼痛等へ拡大させる考えもある。これをNeuroscience-based Rehabilitationとし,ニューロリハビリテーションはその略称とする考え方も多い。筆者もニューロリハビリテーションを「ニューロサイエンスと連携し,損傷後の機能回復の促進を目的にしたリハビリテーション手続き」と定義している。
筆者が所属する畿央大学は新たな研究拠点として,昨年ニューロリハビリテーション研究センター(http://www.kio.ac.jp/nrc/)を開設した。このセンターは神経科学の進歩と手を携え,新しいリハビリテーション手法や技術を導入する等,医療・教育機関と連携した研究と実践をつなぐプラットフォームの役割を担うことを目的としている。現在は高次脳機能学部門,社会神経科学部門,身体運動制御学部門,発達神経科学部門の4つに分かれ基礎・臨床研究に取り組んでいる。今回のシンポジウムではこれら部門のミッションを紹介しつつ,これまでに我々が世界への発信を目的として,国際的に公表した原著論文の中から理学療法に関連する内容を選定しながら話題提供したい。