第50回日本理学療法学術大会

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合同シンポジウム

日本生理学会 合同シンポジウム4

生理学と理学療法の接点

Sat. Jun 6, 2015 10:15 AM - 12:05 PM 第4会場 (ホールB7(2))

座長:浅賀忠義(北海道大学大学院 保健科学研究院機能回復学分野)

[TS-08-4] 脳梗塞モデルラットの記憶障害に対するトレッドミル運動の効果

石田和人1, 嶋田悠2, 濱川みちる3 (1.名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻, 2.医療法人豊田会刈谷豊田総合病院, 3.医療法人タピック沖縄リハビリテーションセンター病院)

【はじめに】本来,理学療法は運動を含めた各種の物理的刺激を身体に施し,適切な生体反応を導く治療法です。これはまさに生理学そのものであると考えられ,筆者自身も生理学教室に席をおき学ぶ機会を頂きました。理学療法の研究に生理学は必須であると考えています。特に本シンポジウムでは,これまで取り組んできた脳卒中モデル動物を用いた研究の一旦を紹介させて頂くことで,その意義を述べると共に,今後,更に有益な理学療法研究を進める上で生理学との接点について考察したいと考えます。
【研究の紹介】脳卒中後には運動麻痺のみならず記憶機能など高次脳機能の障害もみられ,患者様のQOLに悪影響をもたらす。本研究では,中大脳動脈閉塞モデルラットを用い,トレッドミル運動による記憶機能改善効果を検討した。Wistar系雄性ラットを用い,脳梗塞モデルを作成し,高強度運動群,低強度運動群,非運動群に分けた。高強度および低強度運動群には,脳梗塞4日後から4週間のトレッドミル運動(30分間/日,高強度運動群:22 m/分,低強度運動群:8 m/分)を行わせ,記憶機能評価(新規物体認識試験,受動的回避試験)を実施し,脳梗塞体積,微小管関連タンパク(MAP2)の免疫組織化学染色,海馬神経細胞数のカウントを行った。その結果,低強度運動群では,両者の記憶機能スコアが改善を示し,脳梗塞体積の減少,MAP2の発現増加,および海馬神経細胞数の増加がみられた。また,高強度運動群は,受動的回避試験のみスコアの改善を示した。以上より,トレッドミル運動による脳梗塞後の記憶障害改善効果が示され,その程度は運動強度により異なることがわかった。
【研究の限界と今後】本研究により運動が脳梗塞ラットの記憶機能改善に寄与しうることを示したが,臨床応用に向かう橋渡しの段階までには,いくつかの問題点が考えられます。本シンポジウムでは,生理学と理学療法の接点からご議論頂ける場となれば幸いです。