第50回日本理学療法学術大会

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合同シンポジウム

日本骨粗鬆症学会 合同シンポジウム6

超高齢社会における骨折予防の重要性と理学療法士の役割

Sat. Jun 6, 2015 3:00 PM - 4:50 PM 第3会場 (ホールB7(1))

座長:藤田博曉(埼玉医科大学 保健医療学部理学療法学科), 太田博明(日本骨粗鬆症学会理事長/山王メディカルセンター女性医療センター)

[TS-11-3] 超高齢社会における骨折予防のための運動の重要性

石橋英明 (日本骨粗鬆症学会「運動器の健康」普及・連携委員長/伊奈病院整形外科)

2025年には高齢化率が30%を超え,「団塊の世代」が75歳になることから後期高齢者の数が現在の1560万人から約600万人増えると試算されている。75歳以上の人口が増えると,脊椎椎体骨折や大腿骨近位部骨折が急激に増加する。すなわち今後,骨折に伴う患者の苦痛,家族の苦労,医療費,そして介護費用が急増することになり,今まで以上に骨粗鬆症性骨折の低減は急務であると言える。
骨粗鬆症の改善および骨折予防のための対策として,薬剤と運動と栄養が重要である。このうち運動は,骨に力学的付加を加えることで骨強度を高め,筋力やバランス能力,柔軟性を向上させることで転倒予防につながると考えられる。実際,運動介入による骨密度増強効果を示した介入研究,レビューやメタアナリシスは数多く報告されている。また,背筋トレーニングによる椎体骨折予防効果や種々の運動介入による転倒予防効果も数多く報告されている。また,運動習慣がある群は,骨密度が高いこと,転倒が少ないことなども明らかになっている。
運動の問題点は,継続に努力が必要であることで,運動の開始・継続を促す仕組みを作ることは極めて重要である。骨粗鬆症や骨折予防を目的とした骨粗鬆症教室以外に,自治体で行われる運動機能向上プログラムや公的な運動施設でのジムトレーニングやスポーツ活動なども,運動の動機付けになると考えられる。また,日本骨粗鬆症学会の骨粗鬆症リエゾンサービスにおける骨折の1次予防としての運動指導の取り組み,日本整形外科学会のロコモティブシンドローム予防のためのロコモーショントレーニングによる介入プログラム「ロコモコールプログラム」なども広がりつつある。
運動機能の評価と運動指導の専門家である理学療法士の役割は,医療機関での疾患特異的なリハビリテーションにとどまらず,多くの職域でさまざまな需要があると思われる。