第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ヤングインパクトプレゼンテーション

ヤングインパクトプレゼンテーション1

2015年6月5日(金) 12:30 〜 13:30 第12会場 (ガラス棟 G701)

座長:林典雄(中部学院大学 人間福祉学部)

[Y-01-1] 人工膝関節置換術適用患者におけるバリアンス発生を判別する臨床予測式の抽出

―多施設共同研究による取り組み―

天野徹哉 (常葉大学保健医療学部理学療法学科)

診療報酬の改定により,対象者の特性を考慮した最適かつ効果的な理学療法介入が求められている。しかしながら,我が国の理学療法では,担当理学療法士の経験則による主観的な介入が実施されていることが多く,治療効果や運動機能障害の予後予測に関する客観的な情報が少ないため,対象者や社会にとっては理学療法士の専門性が不透明になっている。対象者や社会に対して理学療法士の存在意義を明確に示し,診療報酬の適正配分に繋げるためには,担当理学療法士の知識と経験に基づく主観的な臨床推論をできる限り可視化して,理学療法士による臨床推論の妥当性を示す必要がある。具体的には,理学療法検査の標準値を設定し,対象者の測定値と照合することによって,ある介入において効果が期待できない症例を事前に判別し,異なる介入手段を検討する必要がある。
我々は,科学的根拠に基づいた治療法の選択と運動機能障害の予後予測を実践するための1手法として,「理学療法診断」を提案する。理学療法診断とは,対象者の身体・運動機能における異常な状態を把握し,理学療法介入における有用な情報を得るためのプロセスであり,臨床予測式(Clinical Prediction Rule:CPR)を用いた定量的な予後予測により介入手段を選択することができるため,臨床推論の妥当性を可視化することができる。さらに,我々の研究グループでは,「理学療法診断学教室」というホームページを作成し,全国の臨床現場に勤務する理学療法士から多施設共同研究への参加を募集している。多施設共同研究により,様々な要因によって層別化された信頼性のある大規模データを提示することができれば,対象者や社会への明快な情報のひとつになるため,理学療法の透明性の改善と診療報酬の適正配分に繋がると考える。
本発表では,理学療法診断に基づく臨床推論の概要を説明し,我々が現在取り組んでいる人工膝関節置換術適用患者を対象とした多施設共同研究について紹介する。