[Y-02-1] 脳血管障害患者の体幹機能障害に対する急性期からの戦略的アプローチ
脳血管障害患者の体幹機能は,機能予後を予測する重要な指標であることが示されており,発症早期からの日常生活動作能力の拡大には座位能力の改善が必要不可欠である。脳血管障害後の体幹機能に関する横断的研究では,体幹機能とバランス,歩行の指標との間の明確な関連があり,入院時の体幹機能が発症6カ月時の日常生活動作能力の最も重要な予測因子であったことが示されている。このように,体幹機能は脳血管障害後の機能予後において重要な因子であるが,急性期における介入研究はほとんどない。亜急性期以降では,システマティックレビューにより片麻痺患者に対する体幹機能障害への治療は,中等度のエビデンスがあることが示されている。一方,これまでの体幹機能障害に対する報告の多くは,リーチ動作や座位,臥位等,種々の運動プログラムで構成されており,体幹の運動や筋活動にどのような特異的作用があるかは十分明らかではない。近年では,運動力学的分析により片麻痺例では,前後方向に比べて側方の座位バランス制御がより障害され,側方の座位バランスがその後の機能的な変化と強く関連することが示されている。これらのことは,脳血管障害後急性期から体幹の側方姿勢制御に対する戦略的な治療が体幹の機能障害を効果的に改善させうることを示唆している。一方,体幹は複合的な運動で構成されているため体幹の非麻痺側で代償されることが多く,いかに麻痺側の体幹を機能的に作用させるかが課題となる。以上から,我々は発症早期の片麻痺患者に対し,座位での側方姿勢制御と麻痺側体幹機能の改善を目的とした治療効果について臨床的評価指標による効果判定とともに,運動学的,筋電図学的に検証してきた。そこで,脳血管障害患者に対する急性期からの戦略的アプローチに関してこれまでに得られた成果と,治療の限界ならびに今後の課題について論じる。