[Y-02-2] 脳卒中リハビリテーションにおける電気刺激療法の温故知新
電気刺激療法は外部からの電気刺激によって神経を脱分極させる生理学的反応を利用した治療法である。脳卒中患者においては,1950年代から主に麻痺筋の神経筋再教育に利用されてきた。1990年代になって,脳機能イメージングや経頭蓋磁気刺激等の発展により,電気刺激が中枢神経系に与える影響が徐々に明らかになり,全世界で基礎および臨床研究が数多く報告されるようになったにもかかわらず,未だ本邦で広く臨床で使用されていないのが実情である。その原因として,治療機器がない,あるいは高価であるというハード面の問題もあるが,様々な病態や現象を示す患者に対して,どのような電気刺激が適応できるかといったソフト面の問題も大きいと考える。電気刺激療法を含む物理療法が本邦で衰退してきた背景の一つには対症療法的に安易に使用され続けてきた歴史があるが,そのような使用方法では適切な効果がでないのは明白であり,本来の理学療法における物理療法の位置づけを再考すべきである。我々はそれらの問題を打開すべく,研究会を立ち上げ,神経系理学療法領域のみならず様々な分野での電気刺激療法の臨床応用に関するエビデンス構築に向けて臨床研究を実施している。脳卒中リハビリテーションでは“機能回復”と“代償動作”という治療戦略を立てる上で重要な2つの側面があるが,電気刺激療法は停滞している“機能回復”に介入できる可能性のある数少ない治療法である。本講では,臨床上度々問題となる麻痺側亜脱臼に対する電気刺激と運動療法の併用治療や重度運動麻痺例に対する鏡治療との併用治療,痙縮コントロールにおける電気刺激の役割,軽度運動麻痺患者に対する課題指向型練習効果を促進するための末梢神経電気刺激など,具体的な臨床応用について自験例を踏まえて紹介したい。
本講を通じて,運動療法の補助的なツールとして電気刺激療法が適切な使用方法で広く臨床応用されることを期待しつつ,より効果的な方法を目指すために更なる展望を述べたい。
本講を通じて,運動療法の補助的なツールとして電気刺激療法が適切な使用方法で広く臨床応用されることを期待しつつ,より効果的な方法を目指すために更なる展望を述べたい。