[P29-09] 塩酸ベタイン製剤が乳牛のルーメン内in vitro消化に及ぼす影響
【目的】塩酸ベタイン製剤(BP)は牛の消化器疾患治療薬として利用されているが,泌乳初期乳牛への投与によって乳量が増加することが当研究室の先行研究で報告されている(加藤ら,産業動物臨床医学雑誌,2017).その機序は不明だが,ルーメン微生物が泌乳期飼料に十分に対応できない分娩直後において,BPが好適な作用をもたらす可能性がある.そこで本研究では,in vitro培養により,BP添加効果を乾乳期と泌牛期のルーメン液で比較した.【方法】ルーメンカニューレ装着牛(乾乳牛および泌乳牛各1頭)から採取したルーメン液を培養液とし,泌乳期用TMRを基質とし,BPを加え,38℃の嫌気的条件で6および24時間培養し,pH,揮発性脂肪酸(VFA)濃度および乾物消化率を測定した.BP添加量は30g/日投与相当(低量区)または60g/日(高量区)とし,無添加区とプロピレングリコール添加区(PG区:ポジティブコントロール)を設けた.【結果】乾乳牛のルーメン液は,泌乳牛と比較して,乾物消化率,ガス発生量および総VFA濃度が低かった.乾乳牛のルーメン液を用いた場合,ガス発生量および総VFA濃度は6時間培養後にPG区,BP高量区の順に多く,無添加区との差が認められた.泌乳牛のルーメン液にはBPの添加効果は認められなかった.以上の結果より,BPの乳量増加効果は分娩直後の消化促進作用を介している可能性が示された.