[P29-19] 血管内皮細胞におけるRegnase-1を介した鉄代謝調節機構に関する検討
【目的】鉄は生命活動に必須の栄養素である.鉄欠乏による低酸素を感受した血管内皮細胞ではHIFタンパク質を介して,血管新生を含めた様々な反応が引き起こされる.最近,腸管上皮細胞において,鉄欠乏に応じて誘導されたHIFがRNA分解酵素であるRegnase-1の発現を亢進し,HIFを負に制御する酵素であるPHD3のmRNAを分解することでHIFが安定化するポジティブ・フィードバックの系が知られるようになり,Regnase-1による新たな鉄代謝調節機構が提唱されている.本研究では,同様の機構が血管内皮細胞においても存在するかを確認することを目的とした.【方法】血管内皮細胞の形質を有するISOS-1細胞において鉄キレーターである2,2'-ジピリジル(DP)で処理した際のRegnase-1ならびにPHD3のmRNA発現について調べた.【結果】Regnase-1 発現はDPの影響を受けなかった.PHD3 発現はDPによって増加し,FeSO4同時添加によりDPの影響が阻害された.我々は,ISOS-1ではJNK経路活性化を通して血管新生因子であるBmp6発現を惹起することを見出したが,PHD3 発現の増加はこの経路を介さず,新規のタンパク質合成を必要としなかった.これらの結果は,腸管上皮細胞で提唱されているRegnase-1を介した鉄代謝調節機構はISOS-1細胞には適用できないことを示唆している.