[P29-23] 精子受精能におけるINSL3の役割
【目的】INSL3は卵管液で検出され,精子赤道部に分布する受容体RXFP2に結合し,機能発現する可能性が示唆されている.本研究では,ブタ精子におけるINSL3の受容体シグナリングを調べ,精子受精能への関与を究明した.【方法】ブタ精子は精巣上体尾部精子を用いた.まず,精子膜画分を調製しINSL3との結合親和性を分子間相互作用解析で調べた.次に,精子をINSL3で暴露し,細胞膜コレステロール,cAMP,PTK活性,蛋白質チロシンリン酸化,E-カドヘリン発現などを解析した.精子の受精能はCTC法による受精能獲得と,体外受精法による評価を行った.【結果】INSL3は精子膜画分に対してKd値4.58 nMで結合することがわかった.次に,精子へのINSL3暴露はコレステロール放出を誘起しないが,細胞内cAMPの上昇とPTK活性のわずかな変動をもたらし,受精能獲得時にみられるp40のチロシンリン酸化が検出された.さらに,E-カドヘリンの発現上昇もみられた.精子の受精能をCTC法で調べた限り受精能獲得型精子の誘起は陰性で,体外受精法では明らかに受精率の有意な増加が認められた.【結論】INSL3はcAMPによる受容体シグナリングを介して,精子受精能に関わるタンパク質のチロシンリン酸化と接着分子の発現を刺激し,精子の受精能獲得と卵との接着・融合に関与することが示唆された.