[P29-33] ウシ初期胚発生過程におけるオートファジー制御が発生能に及ぼす影響
【目的】哺乳類の初期胚発生にオートファジーが重要な役割を果たすことが知られているが,ウシ初期胚発生過程におけるオートファジーの役割については不明な点が多い.本研究では,ウシ体外受精胚の初期胚発生過程におけるオートファジー動態を観察するとともに,それらの誘導または阻害が胚発生に及ぼす影響についても検討を行った.【方法】初期発生過程におけるオートファジー動態はオートファジーマーカーであるLC3の免疫染色により行った.また,体外受精胚を対照区,オートファジー誘導(Rapamycin添加),またはオートファジー阻害区(Wortmannin添加)に分け,8日間発生培養を行い,分割率・胚盤胞形成率の比較を行った.【結果・考察】LC3免疫染色により,観察した全てのステージでその発現が観察されたが,2-16細胞期胚と胚盤胞期胚では発現が特に高く,オートファジーが活性化していることが示唆された.また,発生に関して,分割率は,対照区と比較して阻害区で低い結果であり,胚盤胞形成率では,それぞれ対照区と比較して誘導区では高く,阻害区では低い結果であった.一方,オートファジー阻害処理を培養後2日までに解除することで,対照区と同等の胚盤胞形成率が得られた.これらの結果から,オートファジー誘導はウシ胚の発生能を向上させることが示されたが,ごく初期の発生ステージでの阻害は発生能に影響を及ぼさないことも示唆された.