[P29-35] ブタ体細胞核移植胚作出におけるαリポ酸処理の有効性の検討
【目的】体細胞核移植(SCNT)技術は畜産から医学・薬学領域への応用が幅広く期待されている.しかし,その作出効率は非常に低く改善すべき課題である.この要因の一つに体外培養下における酸化ストレスがある.近年,抗酸化物質であるαリポ酸処理がヤギSCNT胚の発生能改善に有効であることが示された.そこで本研究では,ブタSCNT胚作出におけるαリポ酸処理の有効性を検討した.【方法】種々濃度のαリポ酸を成熟培地に添加し培養した.培養後,第1極体を放出した成熟卵を選抜し,酸化ストレスレベルの計測および単為発生(PA)胚の発生能を評価することにより,αリポ酸の最適処理濃度を特定した.続いて,最適処理濃度のαリポ酸を添加した成熟培地で培養した成熟卵を選抜しSCNT胚を作出した.作出したSCNT胚は,活性化処理2日後の卵割状況および7日後の胚盤胞形成状況を観察した.得られた胚盤胞は細胞数およびアポトーシス割合を計測することでその品質を評価した.【結果】ブタSCNT胚においては,卵割率および細胞数において有意な差が無かったが,胚盤胞形成率はαリポ酸処理区が無処理区と比べて有意に高かった(p<0.05).アポトーシス割合はαリポ酸処理区が無処理区と比べて有意に低かった(p<0.05).以上の結果から,αリポ酸処理はブタSCNT胚の作出効率および品質の改善に有効であることが示された.