[P29-51] MEATabolomics in Beef:黒毛和種牛肉貯蔵過程における代謝成分の網羅的変動解析
【目的】牛肉は貯蔵によりその食味性が大きく変化する.高度に脂肪交雑が入る黒毛和種牛肉では,熟成後に独特の香りが生成することが知られているが,その赤身肉由来の成分生成についての解明は限定的である.本研究では,貯蔵中の黒毛和種牛赤身肉部分におけるメタボロミクスにより,水溶性成分の変動および生成反応ネットワークを網羅的に解明することを目的とした.【方法】と畜0.5時間後に枝肉の胸最長筋(n=3)から試料一部を採取した後,枝肉を2℃で貯蔵し,1日,14日間後においても一部を採取した.試料から赤身肉のみを切り出し,そのpH測定とともにキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)による分析を行った.代謝物質プロファイルを作成し,主成分分析,クラスター解析,各成分の経時変動解析を行った.【結果】検出されたピークから計171種の候補物質からなるプロファイルが得られた.pH低下の他,複数種のアミノ酸とジペプチドや乳酸の増加から,と畜後の熟成に伴うタンパク質分解や解糖反応の進行が認められた.また,ATP分解によるIMPやヒポキサンチン等の増加に加え,チアミン,コリン,ニコチンアミド等のビタミン類,グルコン酸,スペルミジンの増加が認められた.と畜後の牛赤身肉における,ペントースリン酸,糖リン脂質,グルタチオンに関する代謝やクエン酸回路の反応,およびその食味との関連性が示唆された.