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[I-19-11] 亜急性第一胃アシドーシス牛の分娩前後における肝組織中遺伝子発現の変化
【目的】亜急性第一胃アシドーシス(SARA)牛の分娩前後における肝組織中遺伝子発現を明らかにする目的で,マイクロアレイを用いた網羅的解析を行った.【材料と方法】経産乳牛18頭を供試し,分娩~2週後までに前胃液pH < 5.6が1日3時間以上・2日以上をSARA群(n=9),同1日以内を非SARA群(n=9)と区分した.肝組織は分娩前3週,分娩後2週と6週に生検針を用いて採取した.RNAを抽出後,マイクロアレイ法により遺伝子発現を解析し,P < 0.05およびFold Change >±1.5の遺伝子をIPA software(Ingenuity System,USA)により分析した.【結果と考察】SARA群では非SARA群に比べて,分娩前3週にIGF-1と結合するIGFBP6発現が増加,分娩後2週にGH分泌抑制に重要なSOCS2発現が増加,炎症刺激で発現が増加するJUNや炎症関連遺伝子のCCL5発現が減少した.また,発現変動遺伝子の機能解析により,SARA群では分娩後2週にLPSがUpstream regulatorとして関わる経路が抑制され,本経路の下流遺伝子にCCL5,JUN,SOCS2が含まれていた.これらのことから,SARA牛の肝組織では分娩前にIGF-1による免疫機能の増強,分娩後にLPSに対する炎症反応およびGH分泌の抑制に関連した遺伝子発現が変動することが示唆された.