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[II-18-04] 福岡市に生息する野生イノシシの死後硬直と行動圏に関する研究
【目的】有害鳥獣であるイノシシの対策の一つに食肉利用が挙げられる.しかしイノシシのような野生鳥獣肉は,肉質の差が大きい.例えば死後硬直はほとんど考慮されないため,硬く保水性に劣る死後硬直状態の肉が食されているケースもありえる.また対策にはイノシシの行動パターンの情報も必要である.本研究では,野生イノシシの死後硬直の時間的な推移を調べるとともに,捕獲地域での行動圏を調査した.【方法】福岡市の九州大学内の箱罠で捕獲したイノシシを頸動脈切断によりと殺し,0-72時間後の大腿二頭筋(モモ),胸最長筋(ロース)の筋硬度とpHを測定した(保存温度0℃).また,0,12,72時間後は,サルコメア長からも死後硬直の程度を評価した.また箱罠で捕獲したイノシシにGPS追跡装置を付けた後,罠から逃し,2-3ヶ月間の行動パターンを地図上に描画した.【結果及び考察】イノシシの筋硬度はと殺後12時間でピークを迎え,その後徐々に低下し,72時間後では0時間とほぼ同じ値となった.pHは時間が経つにつれて徐々に下がり,24時間以降にほぼ一定となった.筋収縮の指標であるサルコメア長は12時間で最も短く,筋硬度の結果を支持していた.また行動圏について,九州大学内のイノシシは,基本的には捕獲された丘を活動圏とし,道路あるいは森林が途切れる地点がイノシシの活動圏の境界となっていることが推測された.