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[II-18-08] イルカ用代用乳創製に向けた3種イルカの乳成分の比較
【目的】水族館では,母イルカが育児放棄した場合などに人工哺育が試みられている.また近年,JAZAによりイルカの追い込み漁が禁止され,加盟水族館におけるイルカの入手方法が自家繁殖のみとなり,繁殖率の向上という点で人工哺育の重要性が増している.現在イルカ専用の代用乳が存在せず,動物用代用乳にサプリメント等を添加して与えているが,死亡例が多い.そこで本研究では,イルカ用代用乳の創製を目途に,イルカ乳成分の種間の相違について確認することを目的とした.【方法】新江ノ島水族館のハンドウイルカ(分娩後181〜391日目の乳)の,城崎マリンワールドのカマイルカ(分娩後435〜471日目の乳)の,そして沖縄美ら海水族館のマダライルカ(分娩後12日目の乳)の乳成分(全固形分含量,タンパク質含量,脂肪含量,乳糖含量,タンパク質組成,遊離アミノ酸組成,脂肪酸組成)を定法に基づいて分析した.【結果】カマイルカの全固形分含量は他2種と比較して顕著に高く,タンパク質含量も同様の傾向であった.一方,カマイルカの乳糖含量は他2種と比べて顕著に低かった.これは,他2種と比較してカマイルカは寒冷地に生息しているため,乳糖よりもエネルギー効率の良い脂肪をエネルギー源にしているためと考えられた.しかし今回の供試試料は,採取した分娩後日数や季節が揃っておらず,今後,さらに泌乳期や季節による影響を考慮した検討が必要である.