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[III-YS-01] 但馬牛の系統分類が長期的な遺伝的多様性に与える効果
【目的】遺伝的多様性の減少が危惧される兵庫県の黒毛和種(但馬牛)では,ジーンドロッピング法と主成分分析を組み合わせた手法により集団を5つの系統(G1–4,G5,G6,G7およびG8)に分類し多様性の維持を図っている.本手法は,短期的な多様性の維持に関する有効性は確認されているが,本研究では長期的な有効性の調査をコンピュータシミュレーションにより実施した.【方法】但馬牛の現存個体12,578頭をシミュレーションの基礎世代(世代0)と定義した.ここから各世代で,方法1)雄牛20頭,雌牛5,000頭を無作為に選抜,あるいは方法2)系統分類を行い,各系統で雄牛4頭,雌牛1,000頭を「系統らしさ指標(DL)」により選抜し,世代15まで集団を発生させた.DLとは,第1から第3主成分得点で個体を空間にプロットし,原点およびx・y・z平面から遠いものを優れていると評価する指標である.【結果】平均近交係数は,方法1)では世代1の0.245から世代15の0.310まで増加したが,方法2)では世代15で0.493にまで達し,系統内交配が集団の近交度を大きく増加させた.一方で両方法の遺伝的多様性指数(GDt)はほぼ同等であった.方法2)において,GDtを構成する要素のうち系統内の遺伝的多様性はGDt以上に大きく減少したが,系統間の遺伝的多様性は0.039(世代1)から0.176(世代15)まで増加した.しかし,方法2)では維持が困難になる系統が認められ,G5では98%の反復で世代5まで到達できなかった.