日本畜産学会第126回大会

講演情報

口頭発表

3. 繁殖・生殖工学

繁殖・生殖工学

2019年9月18日(水) 14:00 〜 16:35 第IV会場 (4番講義室)

座長:田島 淳史(筑波大生命環境/T-PIRC農場)、山内 伸彦(九大院農)、横尾 正樹(秋田県大)、木村 直子(山形大)

14:20 〜 14:30

[IV-18-03] 液体窒素を使用しない凍結乾燥精子を用いたウシ体外受精胚作出の試み

*松川 和嗣1、横山 輝智香2、及川 俊徳3、緒方 和子4、武田 久美子4、枝重 圭祐1 (1. 高知大農、2. 熊本天草家保、3. 宮城畜試、4. 農研機構畜産部門)

【目的】一般的にウシ精液は液体窒素中で凍結保存されているが,持続的な開発目標 (SDGs) に貢献するウシ体外受精胚の生産のためには精液の保存性および環境負荷に対する改善が必要だと考えられる.そこで本研究では,冷蔵輸送精液を供試し,凍結乾燥によって調整したウシ精子による体外受精胚の作出を試みた.【方法】採精したウシ精液は,卵黄を添加した一次希釈液で希釈し冷蔵輸送した.到着後,精子を8 mM L-グルタチオン (GSH) あるいは5 mM ジチオトレイトール (DTT) で10分間処理し,Na-EGTA (50 mM NaCl,50 mM EGTA,10 mM Tris HCl,pH 8.2) で浮遊させ凍結乾燥をおこなった.凍結乾燥精子はアルカリコメットアッセイ法によってDNA損傷を評価し,透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察した.凍結乾燥後-30℃で保存した精子をウシ成熟卵母細胞に顕微注入し,イオノマイシンおよび6DMAPによる活性化処理後7日間の発生培養をおこなった.【結果】冷蔵輸送後の精液は高い運動性および生存性を維持していた.凍結乾燥精子のDNA損傷はGSH処理区では認められず,DTT処理区では25%の損傷が検出された.さらに,TEMによる観察によってDTT処理区では精子先体部の著しい損傷が認められた.顕微授精後の卵割率は69% (74/107),胚盤胞期胚発生率は13% (14/107) となった.