[IIIYS-01] 骨格筋細胞分化において小胞体ストレス応答分子XBP1uが果たす役割の解明
【目的】骨格筋分化は多数のシグナル経路により調節される。近年,細胞分化に対する小胞体ストレス応答シグナルの関与が示唆されている。当研究室では,同シグナル分子であるXBP1を欠失した筋芽細胞(;XBP1-KD細胞)は分化能が著しく減少し,XBP1uは分化誘導後に発現増加することを明らかにした。XBP1uは自身と結合した他タンパク質とともに分解されるが,筋分化における役割は不明である。本研究は,XBP1uは分化抑制因子Id3を分解標的とすることで筋分化に寄与するか検証することを目的とした。【方法・結果】分化能が著しく低いXBP1-KD細胞ではId3タンパクが高い発現レベルのまま維持されることが分かった。共免疫沈降アッセイ,プロテアソーム阻害剤およびXBP1uとId3の過剰発現ベクターを用いた実験系により,Id3はXBP1uの筋分化過程における分解標的であることを突き止めた。また,細胞周期制御因子群の発現解析,EdU染色により,XBP1-KD細胞では分化誘導後の細胞周期からの離脱が遅延することを発見した。さらに,RNAiによりId3を欠失させたXBP1-KD細胞では,分化誘導後の増殖が認められず,分化能がレスキューされることを見出した。 【結論】以上から, XBP1uはId3を分解標的とすることで細胞周期からの離脱を促す,分化初期の細胞内変化に適応する役割を担う分子であることを証明した。