[AW-07] 反芻動物の未利用資源の飼料化およびメタン低減に関する研究
近年、反芻家畜の生産において、飼料と食料との競合や第一胃(ルーメン)から排出されるメタンが大きな問題となっている。これらの課題に対し、本研究では「未利用資源の飼料化」および「新規脂肪酸カルシウムの添加によるメタン低減」を目指した。 未利用資源の飼料化に関して、①タイ国で製造されている調味料の副産物である脱塩母液および母液、②日本のワイン工場から産生されるワイン澱、③タマリンド核粕の飼料特性に関する研究を行った。研究①では脱塩母液を食塩の代替としてタイ在来牛に給与した結果、酸性デタージェント繊維消化率を向上させた。これより、脱塩母液は低質な粗飼料が多い東南アジアでの肉牛生産において有用である可能性が示唆された。次に、原材料の異なる2種類の母液(母液1および母液2)の飼料特性をin vitro試験で評価した。濃厚飼料基質条件下では母液1添加が、粗飼料基質条件下では母液2添加が基質の分解性等のルーメン発酵特性を向上させた。この結果から、同じ母液でも生産原料が異なることにより、給与効果が異なることが明らかになった。研究②では、濃厚飼料の乾物あたり最大20%をワイン澱により代替し給与した結果、消化率や窒素出納等に負の影響を与えず、酸化ストレスマーカーを低減させた。以上より、ワイン澱は濃厚飼料の代替飼料として有用であり、酸化ストレスの抑制が期待できることが示唆された。研究③ではin vivo試験により、タマリンド核粕のタンパク源としての給与は消化率や窒素出納およびルーメン発酵特性に負の影響を及ぼさないことが明らかとなった。 次に、脂肪酸のモル比を高くし、シリカゲルを混合した新規脂肪酸カルシウムの給与が反芻動物のメタン産生およびルーメン微生物叢に与える影響をin vitro試験で評価した。その結果、新規脂肪酸カルシウム添加により、メタン産生が大幅に減少した。また、無添加区と比較し、新規脂肪酸カルシウム添加区ではメタン産生菌やプロトゾアが減少していた。さらに、プロピオン酸産生に関する細菌の割合が増加し、プロピオン酸が上昇していた。以上より、新規脂肪酸カルシウムの添加はルーメン微生物叢を変化させ、反芻動物のメタンを低減させる可能性が示唆された。 これら一連の研究により得られた研究成果は反芻家畜の生産における、新規飼料の開発やルーメン由来のメタン低減に貢献するものである。