The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

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授賞式・受賞者講演

推戴式・授賞式・受賞者講演

Thu. Sep 15, 2022 1:30 PM - 4:00 PM Zoom会場1 (オンライン)

[AW-06] 黒毛和種における筋肉内脂肪酸組成に関わる遺伝子多型の同定

*Fuki Kawaguchi1 (1. Kobe University)

黒毛和種においては近年、肉中の脂肪を構成する脂肪酸の種類と比率、いわゆる“脂肪酸組成”に注目が集まっている。我々の研究室においては、黒毛和種の肉質の遺伝的育種改良に貢献すべく、脂肪酸組成に対する関連多型の調査を進めてきた。我々はまず遺伝子の機能に着目し、脂質代謝に関わると考えられたLEPLPLPLAG1STARD3遺伝子について調査した。具体的には400~500頭の黒毛和種集団を用いて、それぞれの遺伝子内多型と脂肪酸組成との関連について調査し、有意な関連を示す多型を同定した。 しかしながら脂肪酸組成を制御する遺伝子の数は極めて多いことが知られており、より網羅的な調査方法であるゲノムワイド関連解析(GWAS)が有用であると考えられた。そこで兵庫県黒毛和種集団を用いたGWASを実施したところ、9番および14番染色体に新規のQTLが検出された。まずは9番染色体の責任多型の同定に向け、計8頭の兵庫県黒毛和種を用いたゲノムリシーケンスを実施した。候補領域とした64.9—74.9 Mbpに位置する多型は全部で約4万多型であり、遺伝子の機能や多型の位置、GWASにおける有意SNPとの連鎖不平衡に関する情報を基に絞り込んだ結果、3つの候補多型が選出された。さらにそれらについて兵庫県黒毛和種899頭における効果を調査した結果、CYB5R4遺伝子のc.*349G>T多型が現段階で最も有力な多型として同定された。 また一方で、19番染色体には、FASNSREBP1STARD3GH遺伝子多型といった、脂肪酸組成と関連を示す多型が複数同定されてきた。しかしそれらは共通のQTLにある可能性が否定できなかった。そこで、それらの遺伝子内の5多型について兵庫県および岐阜県の黒毛和種2集団における効果を検証し、さらに連鎖不平衡係数を算出することにより当該遺伝子周辺におけるQTLを調査した。その結果、兵庫県集団においてはSREBP1およびSTARD3遺伝子を含む32.2—46.4 Mbpに、岐阜県集団においてはGH遺伝子を含む47.8—52.1 Mbpに独立したQTLが検出された。 以上のように、黒毛和種において数々の脂肪酸組成と関連を示す多型やQTLの同定に成功しており、今後、当該領域の更なる調査によって新たな責任多型の解明、ひいてはより有用なDNAマーカーの開発を進める予定である。