第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

3 微生物の構造・生理

[ODP3C] c. その他(分子論以外はこちらに)

[ODP-038] 金属片上に形成された細菌性バイオフィルムに対する通電刺激の影響

○平良 啓之1,屋我 実2,山城 哲3 (1琉球大・医・整形外科,2琉球大・工・機械システム工学科,3琉球大・医・細菌学)

【はじめに】細菌性バイオフィルム(BF)は主に細菌細胞,細菌が産生する分泌物(EPS)で構成される。整形外科領域では人工関節周囲感染症(PJI)が問題となるが,BFが形成されると治療に難渋する。今回我々は,金属片上に形成されたBFに対して通電刺激が与える影響を検討した。
【材料と方法】菌株は整形外科領域感染症患者より分離した黄色ブドウ球菌のうち,BF形成が旺盛な株を選定し実験に用いた。BF形成法は菌株をTryptic Soy Broth (TSB) を用いて37℃で培養し,対数増殖期初期に金属片と一定時間接触させた後,TSBにNaCl,glucoseを添加したBF形成用培地(TSB-G)で培養した。自作の通電装置を用いて電流の強度,通電回数,通電のタイミングを変えて,金属片上に形成されたBFに与える影響を検討した。金属片上に形成されたBFはcrystal violetで染色後,酢酸にて抽出し,吸光光度計を用いて定量した。菌との接触後7日目まで培養を継続し,1日ごとにBFの定量を行い解析した。
【結果】検討した2種類の電流強度において,通電刺激1回のみではいずれの通電タイミングにおいても,金属片上に形成されるBFに有意な違いは認められなかったが,通電刺激を複数回行うと通電強度,通電タイミングの組み合わせによってはBFの形成に有意な違いが認められた。
【考察】BFと通電刺激に関する研究は,これまで抗菌剤存在下で長時間の持続電流を流すことで抗菌剤の効果が上がると報告されているが,本研究では通電刺激のみでも,電流強度,タイミング,通電回数を組み合わせる事でBFの形成に有意な違いが認められた。現在,通電刺激がBFのどの構成要素に影響を及ぼすのかを検討している。