第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-138] Streptococcus intermediusの病原性における7型分泌装置の特性解析

○橋野 正紀,関塚 剛史,糸川 健太郎,黒田 誠 (感染研・ゲノムセンター)

小児脳膿瘍の原因菌であるStreptococcus intermedius (Si) TYG1620株は,全ゲノム解読によりType 7 Secretion System (T7SS) 関連遺伝子群の保有が見出された。加えて,TYG1620株ゲノムと公的データベースに登録されたSiゲノムとの比較解析では,T7SS関連遺伝子群を保有しない菌株が複数確認された(Infect Immun. 2017 Jan 26;85 (2))。これまでに,TYG1620株の病原性解明に向けて,T7SS関連遺伝子であるessAessCのトランスポゾン挿入変異株を用いて,in vitroにおけるT7SS依存的細胞傷害性について報告した。本研究では,TYG1620株とT7SS関連遺伝子群を保有していないJCM12996T株(理化学研究所バイオリソース研究センターより提供)を用いて,HeLa細胞に対する傷害性の比較解析を行った。Si JCM12996T株のゲノム解読およびTYG1620株ゲノムとの比較解析の結果,JCM12996T株はTYG1620株と同様に既知の病原因子(Intermedilysin,Sialidase A,Hyaluronate lyase)を保有するが,T7SS関連遺伝子群の保有は認められなかった。両菌株の濃縮培養上清添加による細胞傷害性評価では,TYG1620株が強い細胞傷害性を示すのに対して,JCM12996T株では傷害性の有意な減弱が確認された。さらに,培養上清を限外ろ過法でサイズ分画調整し細胞に添加した結果においても,TYG1620株では50–100 kDa分画において強い細胞傷害性を示したが,JCM12996T株では全ての分画で顕著な細胞傷害性が認められなかった。TYG1620株の病原性においては,既知の病原因子と異なるT7SSが寄与しており,50–100 kDaの細胞傷害性因子がT7SS依存的に分泌されていることが示唆された。