第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-143/WS7-1] 毒素性ショック症候群を発症した黄色ブドウ球菌の毒素産生制御機構の解明

○瀧 雄介1,2,渡邊 真弥1,佐藤 祐介1,李 峰宇1,Kanate Thitiananpakorn1,XinEe Tan1,相羽 由詞1,氣駕 恒太朗1,笹原 鉄平1,崔 龍洙1 (1自治医大・医・細菌学部門,2静岡県立総合病院・消化器外科)

【目的】黄色ブドウ球菌の1.7-68%は毒素性ショック症候群(Toxic Shock Syndrome, TSS)を引き起こす毒素遺伝子(tst)を保有するにも関わらず,TSS罹患率は非常に低い。臨床的にTSSを起こした黄色ブドウ球菌のToxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)産生制御機構を明らかにすることを目的に下記の比較検討を行った。
【方法】本邦でTSSの症例報告をしている6施設より原因菌株を分与いただいた。自施設の2菌株を加えた8株をTSS発症群とし,tst遺伝子を保有するTSS非発症黄色ブドウ球菌株を対照群として用いた。両群の全ゲノム配列をMiSeqにより決定した。菌体培養液にヒト血清を添加し,酵素結合免疫吸着法を用いてTSST-1産生量を測定した。tst遺伝子プロモーター領域のGFPによるレポーターアッセイを施行した。
【結果・考察】TSS由来株のMLST型は,CC5(4株),CC8(3株),CC30(1株)であった。CC5において血清添加によりTSST-1産生量は,TSS発症菌株では著明に上昇したが,TSS非発症株では変化は見られなかった。CC5のTSS発症株ではtst遺伝子のプロモーター領域に点変異が見られ,レポーターアッセイでは点変異群でGFPの発現が有意に活性化した。
【謝辞】獨協医科大学 金谷洋明先生,愛媛大学 亀井義明先生,山下美智子先生,天理よろづ相談所病院 鹿子島大貴先生,近畿大学 北澤康秀先生,京都市立病院 奥沢康太郎先生,公立昭和病院 野田雅裕先生より菌株の,北里大学の胡東良先生と小野久弥先生より抗TSST-1抗体を分与いただき,厚く御礼申し上げます。