第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-148] 一酸化窒素による腸管出血性大腸菌毒素Subtilase cytotoxinの阻害機構の解析

○津々木 博康1,張 田力1,八尋 錦之助2,小野 勝彦1,赤池 孝章3,澤 智裕1 (1熊本大・院生命科学・微生物,2千葉大・院医・病原細菌制御,3東北大・院医・環境医学)

【目的】腸管出血性大腸菌O113株から同定された毒素Subtilase cytotoxin(SubAB)は,小胞体(ER)シャペロンであるBiPを切断し宿主細胞にERストレス性の細胞毒性を示す。我々は以前,SubABがマクロファージの一酸化窒素(NO)産生を抑制し,大腸菌の生存を亢進することを報告した。しかしSubABの毒性発現におけるNOの影響や酸化還元(レドックス)調節機構の関与はこれまで不明であった。そこで本研究では,SubABによる毒性発現にNOがどのような影響を及ぼすか調べることを目的とした。
【方法】ヒト上皮由来HeLa細胞にNOドナー存在下でSubABを処理した。SubABによるBiPの切断はウェスタンブロッティングにて解析した。各種阻害剤およびsiRNAを用い,宿主レドックス分子を探索した。
【結果と考察】NOドナー処理を行ったHeLa細胞ではSubABによるBiP切断が阻害された。阻害剤やsiRNAを用いた実験から,glutathione S-transferase(GST)の一種であるGSTPがSubABの毒性発現に関与することが示唆された。GSTPノックダウン細胞をNOドナーで処理しSubABによるBiP切断を評価した結果,コントロール細胞ではNOドナーによりSubABのBiP切断が阻害されたが,GSTPノックダウン細胞ではNOドナーによる阻害が回復した。以上の結果から,NOがSubABの阻害剤になること,GSTPが宿主レドックス調節分子としてNOによるSubABの阻害に寄与することが示唆された。現在,NOによるSubABの抑制機構について詳細な解析を進めている。