[ODP-150] 組み換えボツリヌス神経毒素複合体の作製と腸管吸収におけるHAの機能解析
食餌性ボツリヌス症を引き起こすボツリヌス神経毒素(Botulinum neurotoxin: BoNT)は,ボツリヌス菌などから産生され,致死性の弛緩性麻痺を引き起こすタンパク質毒素である。本毒素は血清型A~Gに分類され,無毒成分のnon-toxic non-HA (NTNHA) とHemagglutinin (HA; HA1+HA2+HA3) からなる複合体Large progenitor toxin complex (L-PTC) やHAを含まないMedium PTC (M-PTC) として産生される。HAは腸管吸収におけるL-PTCの腸上皮細胞への接着や腸管バリア破壊などの重要な役割を果たす分子であることが明らかにされている。先行研究より,A型62A株L-PTC (L-PTC/A) とB型Okra株L-PTC (L-PTC/B) の経口毒性に顕著な差があることが明らかになっている。また,各毒素の腸管上皮への局在が異なることが分かっており,この違いはHAに起因することが示唆されている。本研究では,L-PTC/AとL-PTC/Bの経口毒性の差は腸管吸収におけるHAの機能によるという仮説を検証するために,HAのみ血清型を入れ替えた組み換えキメラ毒素複合体(rL-PTC/BA)を作製し,HAの血清型の違いが経口毒性に与える影響を明らかにすることを試みた。先ず,NTNHAとHA3の大腸菌共発現システムを構築した。精製したNTNHA-HA3複合体を用いて再構成と精製の方法を検討し,純度の高い野生型rL-PTC (BB-WT,BA-WT) と2種の変異型rL-PTCの作製に成功した。現在,これらのrL-PTCを用いてマウス経口毒性の違いについて解析を進めている。