第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6F] f. 免疫機構・ワクチン開発

[ODP-177] SseJを用いた新規のサルモネラ症ワクチン

○中山 ももこ,アリバム スワルミサ,小川 洋介,下地 善弘,江口 正浩 (農研機構・動衛研)

本研究では,サルモネラに対する新規ワクチンの開発を目的として,サルモネラ経口感染の防御に関わる抗原の同定および宿主免疫応答の解析を実施した。Salmonella enterica serovar Typhimurium (S. Typhimurium) 弱毒株の生菌ないし死菌をマウスに免疫した際,生菌免疫の方がS. Typhimuriumの経口感染を効率的に防御したことから,感染防御に関わる抗原の候補として,宿主に感染する際サルモネラが分泌するエフェクターに着目した。中でもSseJについて,S. Typhimuriumの死菌と共にBALB/cマウスに免疫したところS. Typhimuriumの経口感染が優位に防御された。さらに,血清型の異なるS. DublinおよびS. Choleraesuisを用いてSseJのBALB/cマウスにおける感染防御能を検討したところ,どちらの菌株に対してもSseJとその死菌を組み合わせた免疫により経口感染が有意に防御された。次に,当該感染防御に関与する免疫担当細胞を解析するため,SseJ特異的なCD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞を分離・精製し,それぞれを抗S. Typhimuriumの死菌(O抗原)抗体と共にBALB/cマウスに移入した。このうちCD8陽性 T細胞と抗O抗原抗体の移入によりS. Typhimuriumの経口感染が有意に防御された。以上の結果から,SseJと死菌を組み合わせた免疫により様々な血清型のサルモネラの経口感染が防御されること,そしてその防御にはCD8陽性 T細胞と抗O抗原抗体が関与していることが明らかとなった。