[ODP-189] 単独で潰瘍性大腸炎モデルを重症化させる細菌種の菌体成分解析
我々は以前,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性潰瘍性大腸炎モデルマウス糞便中に増加する特定細菌を見出し,分類学的精査によりParaclostridium bifermentans subsp. muricolitidis sp. nov. PAGU 1678Tを提案した。また,当該菌をモデルマウスへ経口投与することで,単独菌種によるマウス病態増悪能を証明した。しかし,使用したC57BL/6マウスは腸内常在細菌叢を有しており,PAGU 1678Tがいわゆる善玉菌を減らしたのか,直接大腸組織に作用したのかは不明で,共生細菌との相互作用を考慮する必要があった。そこで,結腸由来細胞株に対する当該菌の影響を確認した。PAGU 1678Tは,モデルマウス病態軽減能を有するClostridium butyricum PAGU 1417Tに比して細胞内侵入能が高く,さらに培地へのDSS添加により侵入性は増大した。細胞内では,当該菌処理による炎症応答も確認された一方で,死菌でもわずかながら炎症応答が認められ,PAGU 1678Tによる一連の炎症活性には菌体成分の関与が予想された。そこで,全菌体タンパク質解析を実施したところPAGU 1417Tにはない特徴的な成分を有することが確認された。当該成分のLC TOF-MS解析からはいくつかの候補タンパク質の存在が示唆され,そこには炎症への関与について報告のあるタンパク質も含まれていた。今後,これらを中心とした遺伝子欠損株を構築し,マウスや培養細胞への影響を検討していく予定である。