第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6G] g. その他

[ODP-191/WS7-3] GBP1はTBK1のリン酸化を介してA群レンサ球菌に対する選択的オートファジーを制御する

○曵地 京,野澤 孝志,中川 一路 (京都大・医・微生物感染症学)

Group A Streptococcus (GAS) は,ヒトを宿主とし咽頭炎や壊死性筋膜炎などの感染症を引き起こすグラム陽性細菌である。GASが非貪食細胞へ侵入した際には,GASに対する選択的オートファジーが誘導され菌が分解される。この誘導にはTBK1 (Tank-Binding Kinase 1) のリン酸化が重要とされているが,その分子制御機構はいまだ解明されていない。本研究において我々は,TBK1リン酸化の新規制御分子としてGBP(Guanylate Binding Protein)ファミリータンパク質に着目した。GBPは抗病原体分子として機能するGTPaseであり,病原性細菌の分解・排除に関与する例が複数報告されている。しかしTBK1リン酸化への関与は不明であり,GASに対する選択的オートファジーへの関与も検証が必要であった。
まず,HeLa細胞へGASを感染させた際のGBPの局在を観察したところ,GASを含有するオートファゴソーム(GcAV; GAS-containing Autophagosome-like Vacuole)にGBP1・2・4が局在した。この中でも特に局在率の高かったGBP1についてノックアウト細胞を作成したところGcAV形成率が有意に減少し,GBP1がGASに対するオートファジーへ関与することが示唆された。次にGAS感染時のTBK1リン酸化に関して定量したところ,GBP1ノックアウト(KO)細胞で減弱が認められた。また,共免疫沈降によってGBP1とTBK1の結合が検出された。さらにTBK1リン酸化によってGASへの局在が促進されるオートファジー誘導分子p62に関しても,GBP1KO細胞ではGASへの局在が減少した。これらの結果から,GBP1はGAS感染時にTBK1のリン酸化を制御することでGcAVの形成に寄与することが示唆された。