[ODP-214/WS10-6] Exploration of host receptors in PB1-like phages infection towards Pseudomonas aeruginosa
薬剤耐性菌の蔓延が世界的な問題となった今日,代替的な抗菌戦略として“ファージ療法”が注目されている。しかしながら,細菌はファージに対しても耐性化することから,効果的なファージ療法を行っていく上でファージ耐性化の制御は必須である。当講座はこれまでに,P. aeruginosa(PA)溶菌性ファージ(PB1-likeファージ)を分離し,PA臨床分離株に対する溶菌活性やマウス感染モデルでの効果を報告した。PB1-likeファージはPAのLPSを介して感染することが示唆されているが,ファージの感染を規定する詳細な分子基盤や構造の理解は得られていない。そこで本研究では,PAファージ耐性株を用いた比較解析からPB1-likeファージのレセプター分子の探索を試みた。PA臨床分離株(Pa12)と,Pa12を宿主とするPB1-likeファージ(ΦS12-3)をLB agarで一晩共培養し,Pa12のΦS12-3耐性変異株(Pa12 mtΦS12-3)を取得した。また,Pa12 mtΦS12-3とΦS12-3を再び一晩共培養し,Pa12 mtΦS12-3に感染可能な変異ファージ(ΦS12-3 mtPa12mt)を取得した。Pa12 mtΦS12-3, ΦS12-3 mtPa12mtそれぞれの全ゲノム解析を行い,親株との比較解析からPB1-likeファージ感染に関与する変異を検証した。ゲノム解析の結果,Pa12 mtΦS12-3から,O抗原の糖鎖重合に関与するwzy-like geneに変異が検出された。また,ΦS12-3 mtPa12mtからは宿主菌への吸着に関わるtail fiberに変異が検出された。これらの結果から,O抗原の糖鎖長がΦS12-3の感染能を決定付け,PAファージのtail fiberが糖鎖長の識別に機能していることが示唆された。今後,PAファージの糖鎖認識機構から,より効果的なファージカクテルの設計を目指す計画である。