[S12-3] Development of Phage Therapy against Pathobionts by Metagenome Data
消化管内には細菌やウイルスをはじめとした常在微生物叢が存在し,私たちの健康に大きな影響を与えている。次世代シークエンサーをはじめとしたゲノム解析技術の進歩に伴い,常在微生物叢解析が盛んに行われるようになった。特に,腸内細菌叢の乱れとさまざまな疾患(肥満,糖尿病,関節リウマチ,炎症性腸疾患など)との関係性が明らかとなってきただけでなく,疾患の発症と直接的に関わる腸内共生病原菌(pathobiont)も多数発見され,疾患の発症予防のために除菌が強く期待される。しかし,抗菌薬の使用は有益菌を殺傷し,腸内細菌の乱れを助長する可能性があるため,pathobiontだけを特異的に排除できる方法が求められている。腸管内には腸内細菌を宿主とするバクテリオファージが大量に存在しており,腸管の恒常性の維持に寄与していると考えられる。しかし,その解析は非常に難しくこれまで腸内ウイルス叢の詳細は明らかではなかった。今回,独自の腸内ウイルスゲノム解析パイプラインを作成し,100名を超える日本人健常者の腸内ウイルス叢を解析した。その大規模データを用いて腸内細菌と腸内ウイルスの感染関係を網羅的に解析し,Clostridioides difficileに対するファージ由来の新しい溶菌酵素を同定した。本シンポジウムでは,ヒト腸内ウイルス叢解析から得られた最新の知見について報告する。