[S12-4] Viruses of Archaea from boiling hot environment
自然界のあらゆる生物・微生物にウイルスが存在する。生物界は,古細菌(Archaea)・細菌(Bacteria)・真核生物(Eukarya)の3ドメインに大別されるが,その全てからウイルスが発見されている。細菌や真核生物のウイルスが既に数万株以上単離されている一方,極限環境に生息する古細菌を宿主とする古細菌ウイルスの単離例はまだ100株程度に過ぎない。しかしながら,熱水や高塩環境から発見される古細菌は,レモン型・ボトル型・バネ型など,奇妙キテレツな形状なものが多い。また,ゲノム上にコードされる遺伝子はデータベース上に相同配列が存在しないものが大半である。分類学上は,数万株の細菌ウイルス(ファージ)が12科に分類されるのに対し,僅か100株程度の古細菌ウイルスは24科に分類されている。一般的に極限環境では微生物多様性は低くなるとされることから,古細菌ウイルスが示す多様性の豊かさは特筆に値する。このような特徴から,古細菌と細菌は数十億年前に共通祖先(LUCA)から枝分かれした原核生物同士であるが,進化の過程で異なるウイルス叢(virosphere)を形成していることが,徐々に明らかになりつつある。一方で,Caudovirales目に分類されるhead-tail型ウイルスは,細菌と(一部の)古細菌から共通して発見されていることから,既にLUCAの時点で存在していたことが,近年の研究で明らかになりつつある。本講演では,「地球上で最も熱いウイルス」であり「インスタ映えするウイルス」である超好熱古細菌ウイルスを紹介しつつ,ウイルスの観点から迫る生命の起源と初期進化の研究内容を紹介する。