第94回日本細菌学会総会

講演情報

学会本部企画セッション

[SS] 新型コロナに立ち向かう細菌学会が成すべき行動と変革

2021年3月23日(火) 19:00 〜 21:00 チャンネル4

コンビーナー:菊池 賢(東京女子医科大学),松下 治(岡山大学)

[SS2] 新型コロナウイルス感染症とAMR

○菅井 基行 (国立感染症研究所薬剤耐性研究センター)

2019年に新規に発見された新型コロナウイルスSARS-CoV-2による感染症(COVID-19)は2020年に入り世界中で猛威をふるっており、日本においては、2021年2月現在まで、約40万人の患者が感染した。全世界で医療機関がCOVID-19への対応を迫られ、大きな影響が出ている。AMR対策に及ぼす影響についても直接的、間接的な影響が出ている。特に海外ではCOVID-19に対する予防抗菌薬の過剰投与の懸念とCOVID-19に続く二次感染症として薬剤耐性菌の出現が取り上げられている。国内では緊急事態宣言等に伴う国民の行動変容や医療施設のCOVID-19対応に伴う、医療体制の変化が与える影響が考えられるが、その全貌は明らかではない。我が国は厚生労働省の事業としてJapan nosocomial infections surveillance(JANIS)にて薬剤耐性菌サーベイランスを行っている。我が国においてCOVID-19がJANIS参加医療施設で分離報告される全細菌及び薬剤耐性菌報告数に及ぼす影響を見るために2020年第2期報(4~6月)と第3期報を2019年の同時期と比較した。2期報、3期報共に呼吸器検体と便検体の提出数が特に減少し、各菌種の分離患者数も減少していた。この現象は特にCOVID-19患者を主に受け入れている感染症第二種指定医療機関で顕著であった。一方で、各菌種の分離率(分離患者数/検体提出患者数)は上昇を認め、検査が必要な患者に絞った検体提出がなされていると考えられた。その中でS. pneumoniaeの分離患者数は著明に減少し、分離率も減少している。これは市中における感染対策が昨年よりも格段に行われたからと考えられる。JANISデータでは検体分離患者数と検体提出患者数が共に減少することにより、検体分離患者数が減少するにもかかわらず分離率の上昇がみられた。このようなパンデミック下での薬剤耐性菌サーベイランスの解釈には十分注意が必要である。